土地を相続した人が知っておくべき4つのこと
親が亡くなったことで「実家の土地を相続したけど、この土地はどうすればよいのか?」と思う人はいると思います。また、そもそもどのように相続するのか?を知っている人は少ないでしょう。
そこでこの記事では、土地を相続した人が知っておくべきことを4つに絞って解説します。
この記事を読むことで、相続の流れや自分に合った相続方法、そして土地活用方法が分かっているはずです。
1.相続登記について
土地を相続した人が知っておくべき1つ目は「相続登記」についてであり、相続登記に関しては以下の点を知っておきましょう。
- 相続登記とは?
- 相続登記にかかる費用と必要書類
- 相続登記の注意点
相続登記とは?
相続登記とは、不動産の所有者が亡くなったときに、その不動産を亡くなった人(被相続人)から相続する人(相続人)の名義に変更することをいいます。
そもそも、不動産の所有権は登記によって対外的な効力を発揮します。
つまり、相続登記をしないことには亡くなった人の名義のままであり、対外的に相続人の所有物であるという証明がされていません。だからこそ、相続登記することで所有権の名義変更をするのです。
相続登記にかかる費用と必要書類
次に、相続登記にかかる費用と必要書類について解説します。相続登記に必要な書類、および費用は以下の通りです。
- 相続した不動産の調査費用:約2,000円~3,000円
- 登記に申請に必要な書類:約1万円~3万円
- 相続登記の申請時にかかる費用:固定資産税評価額の0.4%
- 相続登記をする司法書士に支払う報酬:約5万円~10万円
このように、相続登記は不動産の調査をした後に登記手続きに移ります。一般的には、上記の相続登記にかかる作業は司法書士に一任するケースが大半です。
相続した不動産の調査費用
まずは、相続した不動産を調べるために以下のような書類を取得します。
- 名寄せ帳
- 固定資産税評価額
- 登記事項証明書
上記は役所や法務局で取得し、取得にかかる費用が約2,000円~3,000円なのです。
一般的には、相続する不動産の内容は相続人が理解しているケースが多いですが、万が一の抜け漏れをなくすために不動産の調査をします。
登記に申請に必要な書類
相続する不動産を調査したら、次に相続登記に必要な以下の書類を集めます。
- 戸籍謄本(全員)
- 住民票の除票(亡くなった方)
- 住民票(相続人)
- 印鑑証明(相続人)
これらの取得に関する費用が約1万円~3万円になります。
相続登記の申請時にかかる費用
相続登記をする際には、所有権移転登記をするので登録免許税という税金が発生します。
登録免許税は、その不動産の固定資産税に0.4%を掛けた金額になるので、不動産の評価額によって費用が異なります。
相続登記をする司法書士に支払う報酬
上述のように相続登記は司法書士に依頼しますが、その報酬の相場は5万円~10万円ほどです。
仮に、司法書士に遺産分割協議書の作成を依頼したり、上述した書類の取得を全て代行したりすると金額は高くなります。
相続登記の注意点
次に、相続登記の注意点である以下の点を解説します。
- 自分でも登記手続きできる
- 相続登記に期限はない
自分でも登記手続きできる
意外と知られていませんが、登記は司法書士の専任業務ではなく、司法書士の資格を持っていない人でも行うことができます。つまり、相続人が自ら相続登記を申請することも可能というわけです。
ただ、登記は申請書類の作成や書類の準備などが大変なので、よほどの理由がない限りは司法書士に一任した方が良いでしょう。
相続登記に期限はない
また、相続登記に期限はありません。つまり、相続登記を放置しても法的に罰はないため、亡くなった人の名義のまま放置するケースもあります。
しかし、そうなると相続した人が亡くなったときに面倒です。たとえば、Aさんが亡くなり、Aさんの不動産が子供であるBさん・Cさん・Dさんに相続されて、相続登記せずに放置したとします。
そして、Bさんが亡くなったため、Bさんの妻Zさん、子どもD・Eさんに相続されたとします。
そうなると、Zさん・Dさん・Eさんは、Cさん・Dさんと連絡を取り合って持ち分の確認し、自分の相続分を確認するという流れになるので面倒です。
2.相続税の計算方法
土地を相続した人が知っておくべき2つ目は「相続税の計算方法」についてであり、以下の点を知っておきましょう。
- 土地は路線価
- 建物は相続税評価額を算出
- 相続税の税率
結論からいうと、土地も建物も相続税評価額を算出し、その評価額に相続税を掛けて控除額を差し引くという流れです。
土地は路線価
まずは土地の相続税評価額の算出方法から解説します。土地の相続税評価額は路線価を利用しますが、路線価について以下を確認しておきましょう。
- 路線価とは?
- 路線価の計算事例
路線価とは?
路線価※とは道路に設定されている価格になります。土地は、接している道路の路線価によって評価額を算出するので、路線価の金額によって土地の相続税評価額も変わってくるのです。
路線価の計算事例
前項で紹介した、路線価が表示されているホームページ上には、「420C」のような表記があります。この表記は、数字が㎡辺りの路線価であり、アルファベットは借地のときの係数です。
たとえば、「420C」という表記であれば「1㎡あたり420千円(42万円)」の評価額になるので、200㎡の土地であれば8,400万円の評価額になります。
また、Cの借地係数は70%なので、その土地を借地に利用していた場合は「8,400万円×70%=5,880万円」まで相続税評価額は下がるということです。
建物は相続税評価額を算出
土地は路線価で相続税評価額を決めますが、建物の相続税評価額は固定資産税評価額になります。
固定資産税評価額は、納税者(その年の1月1日時点の所有者)に5~6月ごろ郵送される「固定資産税の納税通知書」に書いてあるので、その書面をチェックしましょう。
納税通知書に、「価格」や「評価額」という欄があるので、その金額が建物の固定資産税評価額です。
相続税の税率
相続税の税率、および控除額は以下の通りです。
相続税評価額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | - |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
相続税は基礎控除として、「3,000万円+法定相続人×600万円」があります。
つまり、相続財産の評価額が8,000万円で法定相続人が2人の場合、基礎控除を加味した相続税評価額は「8,000万円-(3,000万円+2人×600万円)=3,800万円)です。
そして、相続税額は「3,800万円×20%-200万円=560万円」になります。
3.土地の相続方法は3種類
土地を相続した人が知っておくべき3つ目は「土地の相続方法」についてであり、以下の点を知っておきましょう。
- 現物分割
- 代償分割
- 換価分割
上記はそれぞれメリット・デメリットが分かれているので、それらを比較した上で自分に合った相続方法を決める必要があります。
現物分割
現物分割とは、不動産(相続財産)をそのまま相続することです。
たとえば土地を相続して、相続割合が同じである法定相続人が、Aさん・Bさんの2人だとします。その場合、その土地の持ち分をAさんが1/2、Bさんが1/2で登記するのが現物分割です。
持ち分割合は相続人の種類(妻か?子どもか?など)によって異なりますが、とにかく現物のまま分割するのが現物分割です。
現物分割のメリット
現物分割のメリットは相続が楽なことです。相続登記する際に、法定相続人で持ち分を分ければ良いので、売却手続きなども必要なく相続が完了します。
現物分割のデメリット
現物分割のデメリットは、土地を売却・賃貸するときの面倒さです。仮に、土地を相続して相続人であるAさんとBさんで持ち分を1/2ずつ登記したとします。
その場合、土地を売却するときも賃貸するときも、所有者であるAさん・Bさんどちらの署名・捺印も必要です。
つまり、片一方が「売りたい・貸したい」といっても、もう一方が「NO」といえば売ったり貸したりできないということです。この面倒さは現物分割のデメリットといえるでしょう。
代償分割
代償分割とは、不動産以外の同価値のもので相続する方法です。たとえば、相続財産に土地と現金があったとします。
仮に、土地の時価が2,000万円で現金も2,000万円であれば、Aさんが土地・Bさんが現金を相続するのが代償分割です。
代償分割のメリット
代償分割のメリットは以下です。
- 相続時は公平
- 不動産の名義人は一人
まず、相続時は公平に相続できる点はメリットといえます。また、不動産の名義人は一人なので、現物分割のデメリットで解説したように、売却・賃貸時に所有者全員の同意は不要です。
代償分割のデメリット
代償分割のデメリットは、将来的に不公平な状況になる可能性がある点です。というのも、不動産の価値は変動するので、相続時は同じくらいの価値でもその後変動する可能性があります。
もし、不動産の価値が急騰・暴落すれば不公平感が出てトラブルになりかねません。その点は、代償分割のデメリットといえるでしょう。
換価分割
換価分割とは、不動産を売却してその売却金額を相続する方法です。
換価分割のメリット
換価分割のメリットは「公平で分かりやすい」という点です。換価分割は現金で分けるので完全に公平であり、代償分割のように将来的に不公平感が出ることもありません。
また、不動産を所有することで発生する固定資産税などのランニングコストも発生もなく、不動産の維持費や管理にかかる費用がない点もメリットといえます。
換価分割のデメリット
一方、換価分割のデメリットは以下の点です。
- 売却の手間と諸費用
- 不動産の活用ができない
不動産を売却するときは、一般的に査定~引渡しまで半年程度かかることも多いです。また、仲介手数料をはじめとした、高額な諸費用がかかる点もデメリットといえます。
そして、不動産を売却してしまうので、その不動産を活用する機会を失う点もデメリットといえるでしょう。
4.相続した土地の活用方法3選
土地を相続した人が知っておくべき4つ目は「相続した土地の活用方法」についてであり、以下の活用方法の概要を知っておきましょう。
- 一棟経営
- 駐車場経営
- 土地信託
前提として、土地活用するには前項のケースで「換価分割」以外を選択する必要があります。
一棟経営
一棟経営とは、土地にアパートやマンションを建築して、賃貸物件として運用することです。相続した土地で一棟経営するメリットとデメリットは以下になります。
一棟経営のメリット
通常の一棟経営は、土地を購入して建物を建築するか、土地付き一棟物件を中古で購入します。しかし、土地を相続しているということは、土地の購入費用がゼロということです。
つまり、土地の購入費用がない分「取得費用」が安くなるので、一棟経営で収益を上げやすい状態になります。
通常であれば、土地の取得費用も回収する必要がありますが、その点を加味せずに一棟経営ができる点は大きなメリットです。
一棟経営のデメリット
一棟経営のデメリットは、建物の建築費用が高額になる点です。
前項のように、そもそも土地がない状態であれば土地も取得する必要があるので、その状態よりは安価です。しかし、それでも駐車場経営などと比較すると高額になります。
小規模のアパートでも数千万円、マンションだと億を超えるケースが大半なので、ある程度の費用を捻出する点は認識しなければいけません。
だからこそ、賃料相場や空室リスクなどをきちんとシミュレーションして、収益を上げられるか?を検証してから判断しましょう。
駐車場経営
駐車場経営には、月極駐車場とコインパーキングの2種類あります。
月極駐車場は利用者と契約を結び、毎月利用料をもらうことで収益を得ます。一方、コインパーキングは利用者に応じて収益が変わります。
駐車場経営のメリット
駐車場経営のメリットは以下の点です。
- 初期費用がかからない
- 用途変更しやすい
仮に、コインパーキングだとしてもコインパーキング業者が初期費用を出すケースが多いので、駐車場経営は初期費用がほとんどかかりません。
また、月極駐車場として利用者と契約していても、住居と違い土地所有者側から一方的に解約すること可能です。そのため、ほかの用途として利用するのも容易になります。
駐車場経営のデメリット
駐車場経営のデメリットは以下の点です。
- 収益が低い
- コインパーキングは縛りがある
駐車場経営は、「住む場所」ではなく「車を貸すスペース」なので、一棟経営と比較すると収益性が低くなります。
また、前項のようにコインパーキングは業者が初期費用を出してくれますが、その場合は「○年以上は運用すること」という契約上の縛りがある点はデメリットです。
土地信託
さいごに、土地信託という土地活用について紹介します。土地信託とは、信託銀行などに土地の運用を任せ、「信託受益権」という形で収益を得る方法です。
信託された信託銀行は、その土地の立地などに応じて活用方法を考え実行します。要は、資産運用のプロに土地活用を任せ、その活用で得た利益を還元してもらうというわけです。
土地信託のメリット
土地信託のメリットは以下の点です。
- プロに運用を一任できる
- 運用の手間と費用がかからない
まずは、土地活用のプロに運用を一任できる点はメリットです。過去のノウハウを活かし、その土地に最も適した運用を行ってくれます。
また、土地活用を完全に信託するので、手間がかかりません。仮に、マンションを建築するとしても、建築費を捻出するのは信託銀行などの信託された側なので、土地所有者は費用がかからない点もメリットです。
土地信託のデメリット
土地信託のデメリットは以下の点です。
- 手数料がかかる
- 運用に失敗すると損失になることがある
まずは、土地を信託するので手数料がかかります。その手数料がかかる分、自分で運用するよりも収益性は低くなりやすいです。また、運用に失敗すると損失を被ることもあります。
土地信託の条件として「事業で損失が発生した場合などにおいて、やむを得ない場合には、お客さまに事業運営に必要な資金をご負担いただくこともございます。」などの文言があるのでチェックしておきましょう。
まとめ
このように、まずは土地を相続したときは相続登記をする必要があります。しかし、そもそも相続方法には現物分割・代償分割・換価分割の3種類ある点を認識しておきましょう。
それぞれのメリット・デメリットを理解し、どの方法がベストかを判断します。その上で、土地を残すのであれば活用方法のメリット・デメリットを理解し活用方法を判断するという流れです。