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表面利回りを要チェック!不正融資の嘘を見抜くカギ

表面利回りを要チェック!不正融資の嘘を見抜くカギ

女性向けシェアハウス事業「かぼちゃの馬車」事件や、TATERUの不正融資疑惑では、銀行の審査に用いる資料の改ざんが行われたとされています。

また、改ざんとまでは言わないまでも、これらの事業者からオーナーに向けて提示される利回りについても、数字を意図的に操作していたように思われる事例が明らかにされています。

本記事では、かぼちゃの馬車事件やTATERU事件における不正融資問題について、表面利回りとの関連性を明示しつつ、今後同じような問題に巻き込まれないための具体的な解決策のお伝えします。

TATERUの不正融資問題と提示された表面利回り

木造アパート 女性向けシェアハウス事業「かぼちゃの馬車」におけるスルガ銀行や、TATERUにおける西京銀行への文書改ざん疑惑など不動産投資における不正融資問題が話題となっています。

一方で、JB PRESSの9月4日の記事に記載されているように、TATERUによるオーナーへの利回りの提示では、利回りを高く感じさせる手法が取られていたことが分かります。

表面利回りに関する問題点

同記事では、2016年にTATERUで購入した物件について以下のように書かれています。

  • 木造2階建
  • 1Kロフト付6戸
  • 延床床面積約130㎡
  • 土地面積約140㎡
  • 総事業費7661万円
  • 借入額7,170万円(金利2.55%/借入期間35年)
  • 想定年間収入は453.6万円

以上の内容で、表面利回りは7.11%だったそうです。

この物件に関するTATERUからの提示には以下のような問題点があります。

  • 表面利回りしか提示がない
  • 物件価格の内抜かれている金額がある

それぞれ見ていきたいと思います。

表面利回りしか提示がない

そもそも、TATERUからの提案では表面利回りしか提示がなかったようです。

表面利回りとは、投資元本に対し、単純に年間の家賃収入(基本的には満室時想定年収)の割合を求めたもので、以下の計算式で求めることが出来ます。

表面利回り=年間家賃収入÷投資元本×100(%)

例えば、1億円の物件を購入して、満室時の家賃収入が1,000万円であれば1,000万円÷1億円×100=10%と計算できます。

一方、不動産投資では固定資産税や修繕費、管理手数料など各種経費がかかりますが、これら経費について考慮していない表面利回りでは投資判断の材料として不十分です。

これら、各種経費を考慮した利回りのことを実質利回りと呼び、以下の計算式で求めることができます。

実質利回り=年間家賃収入-年間経費÷投資元本×100(%)

例えば、上記と同じ条件で年間200万円の経費がかかるとすると、1,000万円-200万円÷1億円×100=8%となります。

実際には、年間の家賃収入から経費を差し引いた後、住宅ローンを支払う必要があるため、経費を考慮しない表面利回りで考えていると場合によっては毎年赤字となってしまう可能性もあります。

物件価格の内抜かれている金額がある

さらに、JB PRESSの記事によると、表面利回りは7.11%と提示を受けたものの、実際に計算してみると5.92%にしかならなかったと言います。

というのも、総事業費は7,661万円かかるのにも関わらず表面利回りに用いた投資元本は6,380万円。

よく見ると、「消費税額及び諸経費相当額を控除した金額で算出」との記載があったと言います。

諸経費には外構工事や地盤工事費、造成工事、上下水工事、建物追加工事などがあり、その合計額は1,000万円以上です。

そもそも、建物を新築する際の見積もりには、どこまで金額を含めるかは定められておらず、消費税額や上記のような附帯工事を別とすることもよく行われますが、説明もなしに消費税や附帯工事費を除いた金額で表面利回りを算出するのは悪質だといってよい行為でしょう。

利回りについては表面利回りと実質利回りの違いに留まらず、物件取得価格や各種経費がどこまで含まれているのか、細かく突き詰めて計算する必要があります。

TATERUの不正融資問題とは?

悪巧みするビジネスマン 冒頭でTATERUで新築した方が提示を受けた表演利回りについてお伝えしましたが、そもそも、TATERUはどのようなことが問題となり、不正融資疑惑を受けたのでしょうか。

TATERU事件の概要

TATERUによる不正融資疑惑の推移は以下の通りです。

  • 2018年3月:TATERUより50代男性に向け、木造アパート物件を提案。
  • 2018年4月:購入資金1億1,000万円については西京銀行より融資を受ける前提で手付金50万円でTATERUと契約締結
  • 2018年5月:融資審査への必要書類として、弾性はTATERUにインターネットバンキングの取引履歴を提出。
  • 2018年5月:TATERUより男性へ融資承認の旨連絡
  • 2018年6月:男性より西京銀行に取引履歴の画像について照会がなされ、残高が改ざんされていることが発覚

つまり、TATERUは男性にアパートを建てさせることを目的に、本当は存在しない自己資金について、改ざん資料を提出することで融資の審査を有利に進めさせようとしたのです。

TATERUの不正融資問題と表面利回り問題

TATERUによる不正融資問題と、冒頭の表面利回りに関する問題はどこか共通点があるように感じます。

その共通点とは、「書類を改ざんしてでも、物事をうまく行かせようとする(=アパートを販売する)」ということ。

不正融資問題では、当たり前の内容では融資の承認を受けることができず、アパートを販売することができないから、書類を改ざんして融資の承認を受けようとしています。

また、表面利回りの問題については、当たり前に表面利回りを算出すると利益が少ないことが表面化してしまう=アパートの販売がうまくいかない可能性が高いため、消費税や附帯費用を差し引いてでも、高い利回りであるかのように説明するという方法を取っています。

不動産投資をこれから始めようとされている方や、すでに取り組んでいる方にとっては、こうした手法にだまされることのないよう、しっかり知識をつけておくことが大切です。

今後同様の問題に巻き込まれないために

TATERUの表面利回りの問題は、違法ではありませんが明らかに不誠実な対応ではあります。

特に投資初心者の方にとって、こうした問題に巻き込まれないためには、自分でしっかりと知識をつけておくことが大切です。

特に表面利回りについては、その表記に決まりがないことから、TATERUが行ったようなことは今後も起こり続けるでしょう。

そこで、以下で表面利回りについて詳しく解説していきたいと思います。

表面利回りには意味がない?

不動産投資の投資判断においては、表面利回りではなく実質利回りを求めるべき旨をお伝えしましたが、それでは、表面利回りを求めるのには意味がないのでしょうか?

その疑問にお答えする前に、まずは表面利回りの構成内容について詳しくみていきたいと思います。

表面利回りの分母(投資額)

まず、表年利回りの分母は、対象の不動産を購入するのに要した投資額ですが、正確に数字を求めるのであれば、物件価格に加えて、取得するのに要した仲介手数料や火災保険料などの経費についても含めたほうがよいでしょう。

なお、新築物件については、後で追加工事や地盤改良が出る可能性もあることから、全ての数字を正確に記載することはできませんが、「想定できる中でできるだけ高い価格」を入れておいたほうがよいでしょう。

高く見積もっていたものが安くなる分には構いませんが、低く見積もっていたものが高くなってしまってはいけないからです。

なお、TATERUのように消費税額や附帯工事を除いた価格の提示があれば、それら、消費税額や附帯工事を含めた金額での計算書も別に作成したもらうようお願いするとよいでしょう。

こちらからお願いして断られるようなことはないはずですし、仮に断られるようであればそれ以上話を進めるのはやめたほうが賢明でしょう。    

表面利回りの分子(収益)

次に、表面利回りの分子は収益です。基本的に、表面利回りで用いる分子は満室時想定家賃収入です。

ずっと満室で稼働し続けるのはそう簡単ではありませんし、また築年数が経っていくと家賃の減額等も検討しなければならないことから、満室時の想定家賃収入だけを指標とするのは問題があります。

それとは別に、空室率を1割や2割などと設定して利回りを算出してみると、より正確に判断できるようになるでしょう。

表面利回りは市場動向を知るのに役立つ

表面利回りの分母と分子についてお伝えしたところで、元の疑問に戻りますが、表面利回りには意味がないのでしょうか?

この点、表面利回りは最終的な投資判断としては役に立たないものの、物件を探し始める最初の頃に、市場動向を探るのには役立たせることができます。

物件の探し始めには、複数の物件を参照することがほとんどで、それら全てについて経費まで算出するのは難しいでしょう。

一方で、表面利回りであれば家賃総額と物件価格があれば算出することができます。

このように、表面利回りは多くの物件を大雑把に比較するのには役立つと言えます。

まずは実質利回りを把握しよう

表面利回りについてお話しましたが、複数の物件を比較する段階が終わり、具体的に物件の取得を検討する段階に入ったら、それぞれについて経費を算出できる資料の提出を依頼するなど、実質利回りの把握に努めましょう。

NOIやIPRも理解しておこう

利回りを用いて投資判断するのであれば、表面利回りや実質利回りだけでなく、NOIやIPRについても理解しておくとよいでしょう。

以下で、それぞれ解説します。

NOIとは?

NOIはNet Operating Incomeのことで、営業純利益と訳されます。

不動産運営という事業によって生み出される単純なキャッシュフローを指すもので、家賃収入から実際に発生した経費(管理手数料や固定資産税など)のみを求めます。

NOiでは、支払い利息を費用に算入しないばかりか、修繕費などの資本的支出も収入から控除しません。

投資元本に対するNOiの割合を示した数値をNOi利回りと呼びますが、これは実質利回りとほぼ同意となります。

IPRとは?

IPRはInternal rate of return のことで、内部収益率と訳されます。

IPRについて簡単に説明すると、「投資期間内における1年あたりの利回り」のことで、不動産投資においては投資期間全体のインカムゲイン(家賃収入)と、売却した時のキャピタルゲイン(売却益)両方の収益を、投資元本との関係で判断することができます。

IPRについては素人が投資判断に使うにはやや難解であるため、どのような指標なのかだけ知っておく程度で構わないでしょう。

まとめ

不正融資と表面利回りについて、TATERUの事例を参考に解説しました。

表面利回りについては、明確な定義がないことから比較的簡単に数字をいじることが可能で、本当は収益力が低いのにも関わらず、数字を操作することで高い収益力を持っているように思わせることができます。

それでも、表面利回りは物件選択の最初の段階で、市場動向を探るのには役立てることができます。

市場動向をある程度把握し、具体的な物件を把握する段階に移ったら、表面利回りではなく1つ1つについて実質利回りを把握するようにするとよいでしょう。

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