低リスクの資産運用は7種類!4つの要素で徹底比較
最近世間を騒がせたニュースとしては、金融庁が発表した報告書に「老後は2,000万円の資金が必要」という旨の記載があった…という報道でしょう。
この報道を見て、自分の老後資金を貯めたい…しかし、できるだけ低リスクで資産運用したいと思った方もいると思います。
そこで、この記事では低リスクで資産運用する方法を8つ紹介し、それぞれを比較していきます。この記事を読めば、自分に適した低リスクな資産運用方法が分かるでしょう。
低リスクである資産運用の代表格は7種類
早速ですが、低リスクである資産運用の代表格は以下の通りです。
種類 | 収益性 | 価格変動リスク | 初期費用 | 流動性 |
---|---|---|---|---|
定期預金 | × | ◎(なし) | ◎(なし) | × |
個人向け国債 | △ | ○ | ◎(なし) | △ |
個人向け社債 | △ | ○ | ◎(なし) | △ |
長期スパンの株式投資 | △~○ | △ | ◎ | ◎ |
ETF | △ | △ | ◎ | ◎ |
REIT | ○ | △ | ◎ | ◎ |
不動産投資 | ◎ | ○ | × | △ |
なお、短期の株式投資・FX・仮想通貨という投資もあります。しかし、これらの投資は売却差益を狙う「投機」に近い取引であり、もっというとギャンブル的な要素が強い取引です。
つまり、あまりにハイリスク・ハイリターンの投資なので、低リスクの資産運用とはいえないため今回は外しています。
次章より、上記の資産運用の仕組みを簡単に解説していきます。
定期預金
定期預金とは、銀行で開設する口座のことで、1年・3年・5年など期間が決まっている預金口座です。
その定期預金口座に自分のお金を預けて、利息によってお金を増やしていくのが定期預金での資産運用になります。
定期預金は、「決められた期間までは原則解約できない」という縛りがあるものの、その縛りがあるからこそ、普通預金よりも多少利率が高くなるのが定期預金の特徴です。
個人向け国債
個人向け国債とは、日本政府(国)が発行している債券であり、平たくいうと「日本政府にお金を貸す」ことです。お金を貸しているので、日本政府から利息がもらえ、それが投資家の収益になります。
利率は最低0.05%を保証しており、今はマイナス金利政策による超低金利時代なので、個人向け国債の利率も0.05%と思っておいて良いでしょう。
また、満期まで保有していれば、元本と一緒に償還されるので元本保証の商品でもあります。
個人向け社債
個人向け社債とは、国ではなく企業が発行している債券です。国よりも企業の方が信頼性は低いので、利率は国債よりも高いですが、元本保証ではありません。
とはいえ、個人向け社債を発行しても買い手がいなければ意味がないです。そのため、個人向け社債を発行する企業は、「ある程度買い需要が見込める」という知名度の高い企業になります。
このような企業が発行元なので、倒産リスクは極めて低いものの、個人向け国債よりは利率が高いのが個人向け社債の特徴になります。
利回りが高い商品だと1.5%程度のものもありますが、大体は1%前後の利回りです。
長期スパンの株式投資
長期スパンの株式投資とは、株を保有することで得られる配当益をメインの収益にした投資です。
株の収益は売買益をイメージしている人も多いと思いますが、今回は低リスクの投資なので、基本的には長期スパンで考える投資です。
そうなると、売買益ではなく配当益がメインになるのです。ただし、配当益も企業業績などによって変動はします。
投資信託(ローリスク商品)
投資信託とは、ファンドにお金を預けて運用を任せることです。たとえば、投資信託Aを取得したら、ファンドAに自分のお金の運用を任せたということです。
そして、ファンドAが上手く運用できれば、その運用益の一部を「分配金」として受け取れます。ただ、運用に失敗したら分配金がゼロということもあります。
また、投資信託も株と同じく需給バランスによって価格が変わるので、売買益を狙うことも可能です。
とはいえ、今回はローリスクの資産運用なので、比較的利回りが低い投資信託を「保有」することを前提にします。イメージはトヨタグループ株式ファンドのような商品です。
ETF
ETFとは、上場している投資信託のことです。投資信託は、ファンドが個別に運用いているので基本的には上場していませんが、ETFは株式のように上場しています。
ETFは何かの指数に連動しており、今回イメージしているETFは「日経225連動型上場投資信託」です。
日経225連動型上場投資信託は、日経平均の主要銘柄に連動しているため、比較的安定しているETFといえるでしょう。
REIT
REITは、上場不動産投資信託という別名称があります。上述した通常の投資信託は、ファンドが株や債券など色々な種類の商品を運用しますが、REITは現物不動産に限定しています。
つまり、ファンドは株や債券などは取得せずに現物不動産を取得して、その不動産の賃料で収益を上げるというわけです。その賃料を投資家へ「分配金」という形で還元するのは、投資信託と変わりません。
また、ETFと同じく市場に上場しているので、証券会社を通じてすぐに売買することができます。
不動産投資
不動産投資とは、区分(一室)マンションやアパート一棟などを取得し、その不動産から賃料収入を得ることです。
REITは自分の代わりにファンドが不動産を購入するので、自分に所有権はありませんが、不動産投資は自ら購入するので所有者は自分です。
では、次章より上記8つの資産運用方法を収益性・価格変動リスク・初期費用・流動性の4項目で比較していきます。
収益性が高いのは不動産投資
種類 | 収益性 |
---|---|
定期預金 | × |
個人向け国債 | △ |
個人向け社債 | △ |
長期スパンの株式投資 | △~○ |
ETF | △ |
REIT | ○ |
不動産投資 | ◎ |
まずは、収益性について以下の点を解説してきます。
- 収益性が高い投資は不動産投資
- 収益性がやや高い投資はREIT
- 収益性が普通の投資
- 収益性の低い投資
収益性が高い投資は不動産投資
最も収益性が高いのは不動産投資であり、その理由は以下の通りです。
- レバレッジ効果が高い
- 利回りが高い
レバレッジ効果が高い
不動産投資は融資を組んで物件を取得するので、自己資金の10倍程度の資産を保有することもできます。このように、小さい資金で大きな資産を取得することを「レバレッジ効果が高い」といいます。
投資の収益は「保有資産額×利回り」で計算するので、レバレッジ効果が高いということは保有資産額が高額になり、結果的に収益額も大きくなりやすいのです。
利回りが高い
不動産投資の利回りは、全ての投資家が公表しているわけではないので正確には分かりません。
しかし、一般的に都内で不動産投資をした場合、返済後(手取り)利回りで2~3%ほどでしょう。ただし、実は2~3%を超える利回りはほかの投資でもあります。
しかし、不動産投資は前項で解説したレバレッジ効果が非常に高いので、利回りの差が多少あっても不動産投資の方が収益は高くなりやすいです。
収益性がやや高い投資はREIT
次に、REITの収益性もやや高いです。というのも、REITは「信用取引」という手法を利用すれば、3倍程のレバレッジ効果を得られるからです。
また、不動産証券化協会によると、REITの利回りは以下の通りなので、レバレッジ効果だけでなく利回りも相対的に高い投資になります。
- 東証一部の株式配当利回り:約2%
- REITの利回り:約4%
- 長期金利(国債など):0%前後
収益性が普通の投資
収益性が上述した投資よりも低い…具体的に2%前後の「利回りが普通」の投資でいうと、以下2つが挙げられます。
- ETF
- 株式投資
ETFは投資信託ですが、指数と連動しているので比較的安定性は高く、株式投資も長期を見越した銘柄であれば安定性は高いです。ただ、利回りはさほど高くはないので、安定性重視の投資といえます。
収益性の低い投資
また、定期預金・個人向け国債・個人向け社債は利回りが非常に低いです。定期預金と個人向け国債は基本0%台の利回りですし、個人社債も高くて1%台です。
そのため、資産を増やす・つくるというよりは、資産を守るという意味合いの方が強いです。
価格変動リスクはそれぞれ異なる
種類 | 価格変動リスク |
---|---|
定期預金 | ◎(なし) |
個人向け国債 | ○ |
個人向け社債 | ○ |
長期スパンの株式投資 | △ |
ETF | △ |
REIT | △ |
不動産投資 | ○ |
今回ピックアップしているのは、比較的低リスクの資産運用方法です。
そのため、全体的に価格変動リスクは仮想通貨などよりは高くありませんが、今回ピックアップした7種類の中で比較するとどうか?…という意味合いです。
その点を踏まえて、以下より価格変動リスクを解説していきます。
価格変動リスクが高い商品
比較的価格変動リスクが高い商品は以下です。
- 株式投資
- REIT
- ETF
- 投資信託
基本的に、長期の株式投資もREITも保有しつづける前提です。ただし、長期間の資産運用をしている最中には、現金化したときもあるでしょう。
そのときに価格変動リスクが大きいのはリスクといえます。
株式投資
長期の株式投資で選ぶ銘柄は、基本的に国内の大型株になるので安定性は高いです。ただし、今回ピックアップしている7種類の中ではリスクは高い方といえるでしょう。
たとえば、JTは配当利回り6%台の銘柄なので、長期の株式投資の代表格といえます。しかし、JTの直近1年の株価を見てみると2,400円~3,200円ほどです。
つまり、30%ほどの変動はあるので、価格変動はやはり大きいといえるでしょう。
REIT
一方、REITもこの中では比較的価格変動が大きいです。REIT価格全体が分かるREIT指数を見てみると、ここ1年の指数は1,700円~2,000円ほどです。
つまり、17%ほどの価格変動はあるので、JTほどではないにしろ価格変動率は少々大きいといえるでしょう。
ETF
ETF(日経225連動型上場投資信託)の直近1年のチャートを見てみると、20,000円~25,000円前後で推移しています。
つまり、ここ1年で25%ほど変動しているので、変動率は大きいといえます。
投資信託
投資信託(トヨタグループ株式ファンド)のここ1年のチャートを見てると、19,000円~24,000円で推移しています。
つまり、ここ1年で26%前後変動しているので、前項に引きつづき変動率は大きいといえます。
価格変動リスクがやや低い投資
次に、価格変動リスクがやや低い投資は不動産投資です。というのも、不動産投資のメイン収益である家賃収入は、短期間で変動するリスクは小さいからです。
たとえば、上述した株式や投資信託のように、家賃は1年で20%~30%下落する可能性は極めて低く、せいぜい数%ほどの下落でしょう。
ただし、不動産(建物)自体の価値は長期的に見ると下落していくので、その点は注意が必要です。とはいえ、不動産投資は売買益をメインに置かないので、さほどリスクとはいえないです。
その他の価格変動リスクは低い
その他の、定期預金・個人向け国債・個人向け社債の価格変動リスクは極めて低いです。そもそも、定期預金はペイオフにより、たとえ銀行が破綻しても1,000万円までは元本と利息が保証されています。
また、個人向け国債も元本保証の商品です。一方、個人向け社債は元本保証ではありませんが、知名度の高い企業が発行しているので、倒産して紙切れになるリスクは極めて小さいといえるでしょう。
初期費用がかかる投資もある
種類 | 初期費用 |
---|---|
定期預金 | ◎(なし) |
個人向け国債 | ◎(なし) |
個人向け社債 | ◎(なし) |
長期スパンの株式投資 | ◎ |
ETF | ◎ |
REIT | ◎ |
不動産投資 | × |
次に、「初期費用」を比較してみると、以下のように不動産投資だけ初期費用が高いといえます。
- 初期費用が高いのは不動産投資
- ほかの投資は初期費用がほぼかからない
初期費用が高いのは不動産投資
不動産投資は物件取得時に以下の諸費用がかかります。
- 仲介手数料(中古購入時のみ)
- 金融機関への融資手数料
- 収入印紙代
- 火災保険料や地震保険料
- 不動産登記費用
- 固定資産税
金額は物件や借入額などによって異なります。目安としては新築で買う場合は不動産購入額の4%~5%程度、中古で購入する場合は7%~8%程度の諸費用と思っておきましょう。
ほかの投資は初期費用がほぼかからない
また、ほかの投資の場合は初期費用がほぼかかりません。
株やREITなどは取得時に手数料がかかりますが、利率に換算すると1%を切っている証券会社が多いため、「初期費用がほぼかからない」といって良いでしょう。
流動性は商品によって異なる
種類 | 流動性 |
---|---|
定期預金 | × |
個人向け国債 | △ |
個人向け社債 | △ |
長期スパンの株式投資 | ◎ |
ETF | ◎ |
REIT | ◎ |
不動産投資 | △ |
さいごに、流動性を比較していきます。流動性とは、簡単にいうと取得した資産の換金性…つまり、現金化のしやすさのことです。
流動性が高い商品
流動性が高い商品は以下のように上場している商品です。
- 長期スパンの株式投資
- ETF
- REIT
これらは市場に上場しているので、平日の日中であれば即時決済できます。ただし、自分の希望通りの価格に売却できるとは限らず、即時決済するなら時価になるので損失を出すこともあります。
流動性が普通の商品
流動性が普通の商品は以下です。
- 個人向け国債
- 個人向け社債
- 投資信託
個人向け国債は解約手続きをすることで、数日で償還されます。投資信託も証券会社を通じて…もしくはファンドに直接解約手続きをすれば、投資金額が時価に換算されて返還されます。
また、個人向け社債も途中で売却できます。いずれにしろ、途中換金の場合は元本割れするリスクがある点は認識しておきましょう。
流動性が低い商品
一方、流動性の低い商品は以下です。
- 不動産投資
- 定期預金
不動産投資は、査定をして売却活動をして契約を結んでから決済をして…という流れになり、現金化まで半年程度かかることも珍しくありません。
また、定期預金は基本的に満期間で解約できないので、途中換金はできないと思っておきましょう。
それぞれの投資に向いている人
前項までで、それぞれの投資の概要と違いが分かったと思います。その点も踏まえ、この章では以下のタイプ別に、それぞれの投資に向いている人を解説していきます。
- 収益性を求める人
- 初期費用を抑えた投資がしたい
- ローリスク・ローリターンで良い人
収益性を求める人
収益性を求める人は、やはりレバレッジ効果が高い不動産投資が向いているでしょう。不動産投資は安定性も高いため、コツコツと収益を積み上げていくことで資産は増えていきます。
もちろん、空室リスクや家賃下落リスクもあるので、物件選びは慎重に行わなければいけません。
ただ、収益性の高さは今回紹介する投資の中では際立っているので、資産をつくり、そして増やしたい人は不動産投資がベストな選択でしょう。
初期費用を抑えた投資がしたい
初期費用を抑えた投資をしたい人は以下が向いています。
- 長期スパンの株式投資
- 投資信託(ローリスク商品)
- ETF
- REIT
長期スパンの株式投資
初期投資を抑えつつ、好きな会社があったり、長期的には売却益を狙ったりしたいのであれば、長期スパンでの株式投資が良いでしょう。
特に、配当利回りが高い銘柄をピックアップしたときに、自分が好きな銘柄があれば株式投資との相性は良いといえます。
投資信託
今回紹介している投資信託はローリスクの投資信託ですが、色々と種類があります。たとえば、国内大型株を中心にした商品だったり、先進国の債券を中心にした商品だったりです。
そのため、初期費用を抑えつつ、1つの金融商品ではなく色々な商品をパッケージ化した商品が良ければ、投資信託を取得すべきでしょう。
ETF
また、前項と同じような考えなものの、もっと気軽に売買したい場合は、流動性が高いETFをおすすめします。
REIT
そして、初期費用を抑えつつ、不動産投資に興味がある人はREITをおすすめします。というのも、REITはファンドを介して、間接的に不動産を所有しているといえるからです。
そのため、本当は不動産投資をしたいけど、初期費用が捻出できない…などの人に向いている投資といえます。
ローリスク・ローリターンで良い人
さいごに、ローリスク・ローリターンで良い人は以下がおすすめです。
- 定期預金
- 個人向け国債
- 個人向け社債
この3種類の中でもリスクに違いはあり、上から順にローリスク・ローリターンです。特に、最もリスクが小さい定期預金を選択するなら、資産を増やすというよりは上述したように「守る」という意味合いが強いでしょう。
また、今のマイナス金利だと個人向け国債も「守る」という意味が強いです。そして、個人向け社債は利率1%以上だと、「資産運用している」といえるかもしれません。
ただ、それでも利回りは低い部類なので、資産をつくる・増やすというレベルではありません。
まとめ
このように、低リスクの資産運用方法といっても色々な種類があり、それぞれ特徴がある点は認識しておきましょう。大事なのは、まず自分の資産をどうしたいか?を考えることです。
それによって、リスクをどれだけ許容できるかが分かり、どの投資に向いているか?が分かってきます。上述した点を踏まえ、自分に合った投資を行いましょう。