不動産投資における不労所得|注意すべき5つの落とし穴
By Oh!Ya編集部
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不動産投資をする上で気を付けなければいけないのが、不動産投資をすれば「自動的に不労所得になる」と勘違いしている場合です。不動産投資も「投資」なので、利益を上げられるかどうかは分かりません。また、「不労」になるかどうかも分からないのです。
今回は、この不労所得について掘り下げていきます。不労所得にならないパターンとは何か?どのような落とし穴に注意すべきか?を解説していくので、不動産投資で不労所得を得たい人は、ぜひ読んでみてください。
不労所得にならないパターンもある
注意すべき落とし穴の1点目は、「不動産投資=不労所得」ではなく、実は不労所得となり得ないパターンもあるという点です。しかし、それでは不動産投資をしているメリットは半減してしまうので、不労所得になり得ないパターンを理解しておくことが重要です。
所得が赤字になるパターン
まずは、所得が赤字になれば、いくら不労だからと言っても投資している意味がありません。そのためには、不動産所得について以下の点を理解しておきましょう。
- 所得の計算方法
- 不動産投資の経費
- 空室リスクと家賃下落リスク
簡単にいうと、不動産所得には経費がかかるため、赤字になるリスクはあります。また、空室・家賃下落になれば、家賃収入が低下する可能性があるということです。
所得の計算方法
不動産投資のメイン収益は家賃収入であり、「年間家賃収入-年間経費」で算出される金額が不動産所得になります。また、この計算式で算出された不動産所得は、ほかの所得と合算する「総合課税」である点も覚えておきましょう。
たとえば、給与所得が550万円の会社員が、「家賃収入144万円-年間経費100万円=不動産所得44万円」の不動産投資をしていたとします。そうなると、この会社員のトータル所得は594万円(550万円+44万円)になるので、所得税および住民税は上がります。
逆に、不動産所得がマイナスになれば、給与所得が減り所得税と住民税は下がるということです。この点は、不動産所得の計算式と一緒に覚えておきましょう。
不動産投資は経費がかかる
さて、上述した「経費」とは、具体的には以下の項目です。
- ローン支払い
- 火災保険や地震保険
- 管理費・修繕積立金(マンションの場合)
- 退去時の補修費用
- 設備交換費用
- 管理会社へ支払う費用
- 税理士への報酬(確定申告を依頼する場合)
不動産投資はこれだけの経費がかかるので、いくら家賃収入が高くても不動産所得がマイナスになることがあります。対策としては、上記の経費についてはシミュレーションすることです。
たとえば、火災保険や地震保険はプランによって金額が決まっていますし、補修費用なども仲介会社にヒアリングすれば、おおよその金額は分かります。
その金額を、前項で紹介した計算式の「経費」の項目に当てはめておきましょう。そうしないと、精度の高い不動産所得のシミュレーションができず、赤字になるリスクが高まってしまいます。
空室リスクと家賃下落リスク
前項は、不動産所得を計算する「経費」部分でしたが、「年間家賃収入」に関しても空室・家賃下落リスクを加味しなければいけません。空室状態になれば、その部屋の家賃収入はゼロになりますし、築年数が経過すれば家賃は下落する可能性が高くなります。
そうなると、当初想定した不動産所得を得ることができなくなり、最悪の場合には赤字になってしまいます。ただ、空室リスクは中々読むのが難しいです。仲介会社に周辺物件の空室率をヒアリングしつつも、年間1か月は空室になる想定でシミュレーションした方が無難でしょう。
また、家賃下落リスクも仲介会社にヒアリングしながら、自ら周辺物件を調査しましょう。同じような条件の物件を見つけ、築年数ごとに坪単価でいくら違うか?という点を調査すれば、おおよその下落率が分かってきます。
不動産投資で「労」がかかるパターン
さて、前項までで不労所得の「所得」について解説しました。いずれのケースも、とにかく所得が赤字にならないようにするために重要なことです。
そして、ここでは不労所得の所得ではなく「不労」部分に注目します。不動産投資をしていても、物件運営などに労力がかかっていれば「不労所得」とはいえません。
不動産投資における「労」とは?
では、そもそも不動産投資における「労」とは何でしょうか?「労」とは、自ら労力をかけることであり、具体的には以下のようなことです。
- 賃借人の募集や契約
- 家賃の回収
- 物件の管理全般
基本的に上記のことは、不動産管理会社に一任することが多いです。だからこそ、不動産投資は不労所得と呼ばれており、上記のことを自らやると「不労」ではなくなります。
自主管理は手間がかかる
さて、管理を自分でやる「自主管理」は、非常に手間がかかる作業で、自主管理の時点で不労所得とはなり得ません。さすがに、賃借人の募集や契約などを自ら行う人は稀ですが、家賃の回収や物件の管理全般を自分で行う人はいます。
というのも、管理会社に委託する項目が減れば、その分管理会社に支払う費用が減るからです。しかし、家賃の支払いが遅延すれば、現地に回収に言ったり、電話連絡したりという手間がかかります。
仮に、アパート経営をしていて管理全般を自分で行うなら、共用部の掃除・設備(電球など)の入れ替え、住民への告知作業などを全て自分でやります。
このように、所得が赤字になること以外にも、自ら不動産の管理をすることで労力を費やせば、それは不労所得ではなくなります。
不労所得を得るためのハードルがある
注意すべき落とし穴の2点目は、不労所得を得るためには以下のようなハードルがあるという点です。
- 物件選びは難しい
- 不動産投資は長期の投資である
- そもそも融資が受けられるか分からない
要は、不動産投資は長期的に黒字になり続けなければ不労所得にはならないということです。そして、仮に長期的に黒字になりそうな良い物件があっても、融資を受けられなければ取得は難しいというハードルもあります。
物件選びは難しい
当たり前の話ですが、長期的に収益を上げ続ける物件選ぶは難しいです。しかし、繰り返しますが収益を上げられないと赤字経営になるため、不労所得にはなりません。ここでは、そんな「物件選び」について解説していきます。
物件の種類は多い
まず、物件選びが難しい理由は、以下のように物件種類が多いからです。
- 区分マンション
- 一棟マンション
- 区分アパート
- 一棟アパート
- 戸建て
「区分」とは一室という意味なので、区分マンションはマンションの一室を取得し投資するということです。さらに、広さ・エリア・築年数・設備・仕様など、同じ物件種類でも違いはたくさんあります。
物件は玉石混交なので、その中から優良物件を見つけるのは、そう簡単な話ではないのです。以下より、物件の見極め方を解説しますが、戸建は広さと需要の関係で投資には向いていないので外して考えます。
物件による特徴の違い
では、どうすれば不労所得になり得る物件を見つけられるかというと、物件種類による以下の特徴の違いを知ることです。
- 初期費用
- 耐用年数
- メンテナンス費用
- 家賃
初期費用が高いのは一棟物件であり、マンション・アパートの順番で費用は上がっていきます。ただ、アパートは木造か軽量鉄骨が多く、耐用年数は木造が22年で軽量鉄骨は27年です。一方、マンションは鉄筋コンクリート造がメインであり、耐用年数は47年になります。
耐用年数が高い方が建物としての劣化が遅いので、家賃下落リスクも低く、メンテナンス費用も安く抑えられます。また、遮音性や断熱性も、耐用年数が高い構造の方が良質なので、必然的に家賃も高くなるのです。
不労所得を生みやすい物件とは?
さて、前項を踏まえた上で不労所得を生みやすい物件は、区分マンションと一棟アパートでしょう。まず、区分マンションは一室の運営ではありますが、ある程度高い家賃を設定でき、劣化具合も遅いです。また、耐用年数が高いので築年数が経過しても売りやすいという点もメリットです。
また、一棟アパートは初期費用がかかってきますが、複数の部屋を持てるので収益が高いです。また、1つの部屋が空室でもほかの部屋で補えるので、リスク分散も可能となります。
たとえば、一棟マンションは収益性が高くなりますが、初期費用が1憶円を超えることが多いです。また、区分アパートは初期費用が小さいですが、家賃も安く設定されるので収益も小さくなってしまいます。その結果、区分マンション・一棟アパートが、特に初心者には向いている不動産と言えるでしょう。
不動産投資は長期の投資である
さて、次に不動産投資は「長期の投資」であるという点を認識することが重要です。そのためには、ほかの投資との違いやインカムゲイン、そして不動産の売買リスクを理解しなければいけません。
株式投資やFXとは違う
不動産投資は、株式投資やFXとは違います。というのも、株式投資やFXは主に売買益という「キャピタルゲイン」がメインの収入だからです。もちろん、株式投資やFXをやっている人の中には、長期の配当収入をメインに置く人もいます。
しかし、不動産投資のように高額な融資が受けられないので、ある程度の資産を持っていないと長期スタンスで利益を上げるのは難しいです。そのため、必然的に短期スパンの投資になり、そうなるとハイリスク・ハイリターンの投資になってしまいます。
基本はインカムゲイン
不動産投資は、前項のようなキャピタルゲインがメインではなく、定期的な家賃収入を得るという「インカムゲイン」がメイン収入になります。インカムゲインがメインだからこそ長期的スパンで考える必要があり、株式投資やFXとは根本的に違うのです。
仮に、キャピタルゲイン(売買益)をメインに不動産投資を行うとします。そうなると、「短期的に売値が上がる物件」を探すことになるので、根本的にインカムゲインを狙ったときの物件選びとは異なるのです。
しかし、不労所得は安定したインカムゲインがあってこそ実現するので、短期的なキャピタルゲイン狙いの場合は不労所得になりにくいです。価格が上がらなければ保有し続けますし、長期的スパンで物件選びをしていないのでインカムゲインは得られない(赤字)・・・という事態になってしまいます。
不動産は売買しにくい
不動産投資はインカムゲインがメインであるのは、そもそも不動産は売買しにくいという点が挙げられます。なぜ、不動産は売買しにくいかというと、不動産を売買するときには、以下のように時間がかかるからです。
- 物件の査定:1~2週間
- 媒介契約(不動産会社選び):1週間
- 売却活動:3か月~
- 契約:申し込みから1週間
- 引渡し:契約1か月ほど
このように、物件査定~引き渡しまでは半年程度かかることが普通なので、売買には時間がかかってきます。そのため、短期的な視点でのキャピタルゲインの考えは、不動産投資には向いていないのです。
さらに、上記のような「手間」がかかるということは、もはや「不労」とは言えません。仮に、キャピタルゲインで利益を上げても、不労所得とはなり得ないということです。
そもそも融資が受けられるか?
不動産投資は融資を受けることで、自己資金の何倍もの資産を手に入れられます。仮に、300万円の自己資金で3,000万円の物件を手に入れれば、10倍の資産を手に入れたということです。
このように、少ない元手で大きな資産を手に入れられることを、「レバレッジ効果が高い」と言います。このレバレッジ効果の高さは不動産投資の大きなメリットなので、融資を受けられないと不動産投資をする意味が半減します。
審査条件とは?
不動産投資のローンは、自宅購入時に利用できる住宅ローンではありません。アパートローンや不動産投資ローンという名称になり、住宅ローンよりも金利は高くなります。
さて、そんなアパートローンなどの融資を受けられるかどうかについては、以下のように審査条件を確認しましょう。
- 借入者の年齢や年収
- 会社の規模や勤続年数
- 過去の延滞歴などの信用保証
- 物件の収益性
要は、借入者が安定して継続的に収入があるか?延滞などの経歴がないか?という点を審査します。
投資物件も評価される
さて、前項で挙げた審査項目の中で住宅ローンと大きく異なるのは、「物件の収益性を審査する」という点です。住宅ローンでも、その物件の担保価値は審査しますが、自宅用なので収益性は審査しません。この点が住宅ローンとの大きな違いなので覚えておきましょう。
不動産投資で不労所得を得るには、そもそも優良な物件を購入する必要があります。その物件購入に不可欠な融資を受けられないと、不労所得を得るスタートラインにも立てません。
身の丈以上の融資を受けるリスク
一方、アパートローンの場合は、物件に魅力があれば身の丈以上の融資を受けられることもあります。しかし、「ローンの借入可能額=返済できる金額」ではありません。将来的な収支の増減をきちんとシミュレーションして、自分が将来に渡っても返済できる範囲で借入を行いましょう。
仮に、身の丈以上の融資を受けてしまうと赤字リスクが高くなり、これもまた不労所得にならない可能性があります。
知識が無いほどリスクが上がる
注意すべき落とし穴の3点目は、不動産投資の知識がないと、それだけリスクが上がるという点です。不動産投資は日常生活では触れない分野もあるので、ある程度知見を身に付ける必要があります。
特に、知らないと落とし穴にハマりやすい以下の知識は必ず頭に入れておきましょう。
- 利回りの落とし穴
- 礼金や更新料の取り決め
- 賃貸借契約は借主に有利
- サブリースの落とし穴
利回りの落とし穴
利回りには、以下の計算式で算出される表面利回りと実質利回りの2種類あります。
- 表面利回り=年間賃料÷物件取得価格
- 実質利回り=(年間賃料-年間経費)÷物件取得価格
結論からいうと、表面利回りではなく実質利回りを基準にしましょう。利回りは、上記の計算式から分かるように、物件取得価格を何年で回収できるか?という指標です。当然、利回りの高い物件の方が収益性が高いので、「利回りの高さ」は不動産投資の物件選びでは重視されます。
しかし、実質利回りはきちんと経費を加味した不動産所得で考えているのに対し、表面利回りは経費を加味していません。ただ、世の中の広告に掲載されている利回りは、大抵「表面利回り」になります。
この点を知らずに物件探しをすると、表面利回りに騙されて実質利回りになるとガクッと数値が落ちる可能性があるのです。そうなると、不動産所得は赤字に陥りやすく、不労所得ではなくなってしまいます。
礼金・資金や更新料の取り決め
不動産投資をする上でのメイン収益は家賃収入ですが、そのほかに入居者から以下のお金をもらいます。
- 礼金
- 敷金
- 更新料
礼金とは、入居者からお礼としてもらうお金です。敷金とは、退去時の補修費用に充てたり、家賃を滞納したりしたときのために、一時的に預かっておくお金です。更新料とは、大体は2年ごとの契約更新時にもらうお金です。
この中でも、特に礼金・更新料に注意しましょう。というのも、管理会社によっては、この2つのお金は管理会社が徴収するという決まりになっていることがあるからです。特に、管理手数料が安価な管理会社は要注意です。
この2つは、不動産投資のメイン収入ではありませんが、不動産投資における大事な収入源であることに変わりはありません。そのため、きちんと管理会社との取り決めを確認しないと、不動産所得の低下につながってしまうリスクがあるのです。
賃貸借契約は借主に有利
次に、賃貸借契約は借主に有利という点を知っておきましょう。というのも、賃貸借契約は借地借家法という法律を基に作られており、借地借家法が借主に有利な法律なのです。その背景には、借主を有利にしておかないと、借主が「貸主に突然退去を命じられて家がない」という事態になり得るからです。
一方、貸主は「家がなくなってしまう・・・」という事態になることは極めて少ないので、借主を守ることを優先しています。借主に有利だと、たとえば家賃を一定期間滞納していたとしても、借主を強制的に追い出すのは極めて難しいです。
そのため、賃貸借契約を結ぶときには、借主の「見極め」は慎重に行いましょう。家賃の滞納者が自分の所有している物件に滞在するという事態になれば、手間もかかりますし、その部屋からも家賃収入もゼロになります。それでは、不労所得とは言えません。
サブリースの落とし穴
次に、サブリースの落とし穴を紹介します。サブリースは確かにメリットも大きいのですが、特に初心者の方は落とし穴に気を付けましょう。
サブリースとは?
サブリースとは、以下の流れで行う契約です。
- サブリース会社の賃貸借契約(マスターリース)を結ぶ
- サブリース会社が第三者と賃貸借契約(サブリース)を結ぶ
要は、サブリース会社と賃貸借契約を結び、そのサブリース会社が又貸しするということです。貸主は、あくまでサブリース会社と契約しているので、空室状態でも家賃収入が入ってきます。
しかし、家賃の6~12%程度の手数料を支払う必要があります。要は、空室リスクはないものの、サブリース会社に支払う手数料がかかるということです。
サブリースで問題視されていること
前項のように、サブリースを結ぶと収益は落ちるものの、空室リスクはなくなります。ただ、サブリースでは「家賃下落」について問題視されているのです。サブリースは、およそ2年を目安にサブリース会社が家賃を下げることを検討するのが一般的です。
なぜなら、サブリース会社にとっては家賃を下げた方が、第三者を賃貸させやすいからです。しかし、借主からすると、ただでさえ手数料を支払って収益が削られているのに、更に家賃が下落すると赤字になるリスクさえあります。
そのため、一見するとサブリースは良い契約ですが、家賃下落リスクが高い点は認識しておきましょう。サブリースを結んだことで赤字になり、不労所得にならないという事態は避けなければいけません。
意外とかかる税金関係
注意すべき落とし穴の4点目は、以下のように不動産投資には意外と税金がかかる点を知っておくということです。
- 不動産取得税
- 固定資産税・都市計画税
- 譲渡所得税
不動産取得税
不動産取得税とは、不動産を取得したときに1度だけかかる税金です。その金額は不動産の評価額によって異なり、さらに50㎡以上だと軽減があるなど、物件によっても軽減条件が異なります。ただ、不動産投資の場合は50㎡以下のコンパクトな物件も多いのです。
そうなると、物件によっては数十万円程度の税額になることもあり、その税金は収益を圧迫します。まずは、仲介を担当している不動産会社に予測金額を算出してもらいましょう。そして、その金額を加味した上で収支シミュレーションをしないと、所得が赤字になり不労所得とはなりません。
固定資産税・都市計画税
固定資産税・都市計画税は、不動産を所有し続ける限り課せられる税金です。固定資産税・都市計画税額も物件の評価額によって異なり、不動産取得税とは違い毎年課税される税金になります。
上述したように、不動産投資はインカムゲインがメインの、長期的スパンで考える投資です。そのため、固定資産税・都市計画税を必ず加味すべき金額であり、この税金が高いと不動産所得に大きく影響してしまうのです。
そのため、前項と同じく予想金額を算出してもらい、その金額を含めて収支シミュレーションすることが大切です。税金は、ローン支払額や補修費用などの経費よりも軽く見られがちですが、長期的には大きな金額になるので気を付けましょう。
譲渡所得税
さて、繰り返しますが、不動産投資のメイン収入はインカムゲイン(家賃収入)です。ただ、10年後や20年後の長期スパンで「売却」という選択もあり得る話です。そのときに発生する「譲渡所得税」に関しては、以下の点を知っておきましょう。
- 譲渡所得の計算方法
- 譲渡所得税率
- 3,000万円の特別控除
譲渡所得の計算方法
譲渡所得は、以下の計算式で算出されます。
計算式:(売却価格-売却時にかかった諸費用)―(購入時の不動産価格+購入時にかかった諸費用-減価償却費用)
たとえば、以下の場合で譲渡所得を計算してみましょう。
- 売却価格:3,400万円(諸費用125万円)
- 購入価格:3,500万円(諸費用130万円)
- 減価償却費:580万円
上記の計算式に当てはめると(売却価格3,400万円-売却時の諸費用125万円)―(購入時価格3,500万円+購入時の諸費用130万円-減価償却費用580万円)=225万円
つまり、225万円に対して、次項で解説する譲渡所得税がかかってくるということです。減価償却費をはじめとした金額の計算は国税庁ホームページなどで行えるので、計算方法を知っておく必要はありません。
ただし、上記の計算式を知り、譲渡所得は単純に「売却額-購入額」ではない点を理解しましょう。つまり、売却時の方が購入時よりも安い金額だとしても、上記のように譲渡所得がプラスになる可能性があるということです。
譲渡所得税率は高い
さらに、譲渡所得税率は高いです。不動産を売却した年の1月1日時点で5年超保有していれば長期保有、5年以下の保有であれば短期保有になります。そして、長期保有と短期保有で以下のように税率が異なるのです。
<長期保有の場合>
- 所得税:譲渡所得額×15%
- 復興特別所得税:上記の所得税額×2.1%
- 住民税:譲渡所得額×5%
<短期保有の場合>
- 所得税:譲渡所得額×30%
- 復興特別所得税:上記の所得税額×2.1%
- 住民税:譲渡所得額×9%
このように、譲渡所得税率は高税率になるので、売却益が出ても税金でかなりの額がかかる点は認識しておきましょう。
3,000万円の特別控除は利用不可
そして、譲渡所得税に関しては、「3,000万円の特別控除」という税制優遇があります。3,000万円の特別控除とは、譲渡所得を3,000万円控除してくれますので、ほとんどの場合で譲渡所得がゼロになります。
これが適用できれば非課税になりますが、この特例はあくまで自宅を売却したときのみ利用できます。そのため、投資用物件の売却時は税制優遇がないという点は認識しておきましょう。
あくまで、譲渡所得というキャピタルゲインはサブ的な収益になりますが、譲渡所得税について上述した点は理解しておくべきです。せっかくインカムゲインで順調に不労所得を得ていても、売却時に高額な税金がかかってしまうと、長期的な収益が悪化するリスクがあります。
不動産投資の隠れたリスク
注意すべき落とし穴の5点目は、前項までで紹介できなかった、以下の「不動産投資の隠れたリスク」です。
- メンテナンス費用
- 退去時の補修
- 規模が小さいリスク
メンテンナンス費用が高額になることもある
意外と軽視されがちですが、メンテナンス費用が高額になり、そのおかげで不動産所得が大幅に下がってしまうということは少なくありません。特に、一棟のアパート投資のときはメンテナンス費用が高額になりがちです。
というのも、アパート投資の場合は一棟を保有しているので、以下のメンテナンス費用がかかってくるからです。
- 外壁の補修工事
- 共用設備のメンテナンス費用
- 各部屋の給湯器などの設備効果費用
外壁の報酬工事は10年程度のスパンで行わないと、物件価値が下落してしまいます。また、一棟を保有しているので、専有部分(室内)以外にも、建物全体を補修する義務を貸主は負っているのです。
また、10数年程度経過すると、給湯器をはじめとして水回り設備の補修や交換工事が発生します。故障していない限りは放置していても問題はありませんが、こちらも外壁と同じで物件価値が下がってしまうのです。
このように、メンテナンス費用が高額になれば、不動産所得が下がり不労所得になりません。一方、メンテナンスせずに放置しても空室リスクや家賃下落リスクが高まり、これも不労所得でなくなるかもしません。不動産会社にヒアリングしながら、長期的スパンの収支計画を立てましょう。
退去時の補修は基本的に貸主が支払う
こちらも意外と知られていませんが、退去時の補修費用は基本的に貸主が支払います。平成23年に改定した、国土交通省のガイドライン※だと、以下のように経年劣化した分は基本的に家主が負担するとされています。
- 太陽光による日焼け
- 日常生活で起こる家具の傷跡
- 冷蔵庫を置いたことによる壁の黒ずみ
要は、貸主が故意に傷や汚れを付けたり、過失があるような使い方をしてない限り、傷・汚れは貸主負担で補修するということです。7~8年前であれば借主が負担するケースも多かったですが、最近では借主負担のケースが増えています。
そのため、「退去時に必ず3万円(税別)をクリーニング費用として徴収する」のような特約を締結するパターンが多いです。退去時の補修費用も不動産所得を下げる要因になるので、この点はきちんと認識しておきましょう。
※国土交通省 「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について
規模が小さいと賃付けを後回しにされる可能性も…
管理会社は、家賃の数%の手数料を徴収します。仮に、家賃が10万円であれば数千円程度です。もちろん、ほかにも仲介手数料などの収入もありますが、管理会社はとにかく「戸数を増やすこと」を優先します。そのため、規模が小さい不動産投資家は賃付けを後回しされる傾向にあるのです。
たとえば、管理会社A社が、不動産ディベロッパーZ社が運営している、50戸の賃貸マンションを丸ごと管理しているとします。そして、A社はあなたの持っている区分マンションも一緒に管理しているとします。
仮に、賃貸物件を探す人がA社に来訪してきて、Z社のマンションもあなたのマンションも条件に当てはまったら、どちらを優先して紹介するでしょうか?収益面から考えて、ほぼ間違いなくZ社の運営しているマンションを優先させるでしょう。
この点は、個人投資家のデメリットと言える部分であり、対策を取るのは中々難しいです。しかし、空室リスクは不動産所得の低下につながり、不労所得とならない物件になってしまいます。
そのため、賃付けを依頼する管理会社は、「店舗がたくさんある」「このエリアに強い」など、とにかく集客力がある会社を選びましょう。
まとめ
このように、不動産投資の大きなメリットであり「不労所得」は、まずは赤字経営にしないことが重要になります。そのためには、きちんと経費項目と予想金額を加味し、長期間に渡る収支シミュレーションが大切です。
また、あくまで労力をかけないことが不労所得の本質なので、管理会社を上手く活用することも重要になります。上述した5つの落とし穴を理解し、不労所得を得られる物件を探し、上手く運営しましょう。