不動産の「評価額」とは?リサーチ方法と評価額の活用方法を解説
By Oh!Ya編集部
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不動産の評価額と聞いて、どういったものを思い浮かべるでしょうか?
実は不動産の評価額は大きく5種類に分類できて、それぞれに異なる役割があります。しかも、どの評価額も不動産投資家であれば理解しておくべき要素なのです。
今回は、不動産の評価額はどのような役割を持ち、どのようにリサーチして活用するのかご説明します。
5つある「不動産の評価額」とは?
不動産の価値である評価額は、売買契約を結ぶときや税金を算出するときなど、さまざまな場面で求められます。そして、不動産の評価額を計算する方法は、1つではありません。
不動産の評価額の計算方法は、以下の5種類があります。
- 実勢価格
- 公示価格
- 基準地価
- 路線価
- 固定資産税評価額
上記の不動産の評価額は、算出する目的に応じて適切なものを選ばなければなりません。
では、それぞれの不動産の評価額をどの場面で用いるのでしょうか?詳しく解説していきます。
実勢価格:市場における実際の取引価格
実勢価格とは、実際に不動産が取引された価格のことで、時価とも呼ばれています。不動産を売買するときだけでなく、単純に不動産の価値を知りたい場合は実勢価格を参照することが多いです。
実勢価格は実際に行われた不動産の取引、周辺エリアの売買履歴をもとに算出されるため、常に一定ということはなく定期的に変動します。
最も実情を反映した評価額である反面、過去の取引事例も算出に影響することから、取引の数が少ないエリアを対象にリサーチをする際は、十分なデータを取れない可能性があります。
ネットを利用して実勢価格を確かめる方法
実勢価格は、自力で調べるには以下の2つのサイトを参照するとよいでしょう。
土地総合情報システムは、国土交通省が提供する不動産取引価格の検索システムです。マップ上に過去の取引情報がピックアップされており、マップ上のマーカーをクリックすることで詳細情報を閲覧できます。
マップではなくテキストベースの検索にも対応しており、エリアや不動産の種類といった情報で取引履歴を絞り込むことも可能。実勢価格だけでなく土地の面積や形状、間取りなど細かな情報を閲覧できるので、投資前のリサーチツールとして優れており重宝します。
REINSについても、同じように参照したい地域を選択することで検索できますが、選択した地域において取引情報が直近1年で100件に満たない場合は、検索結果が表示されないため注意しましょう。
公示価格:地価公示法をもとに国土交通省が公表
公示価格は「地価公示法」という法律をもとに、国土交通省の土地鑑定委員会によって算定される価格のことで、毎年1月1日時点の価格が3月に発表されます。誰にでも公開されており、個人・法人を問わずあらゆる場面で参考にされる評価額です。
土地や建物など不動産の売買価格は、地形や面積、形状などによって異なるだけでなく、取引する人の事情や利害関係に左右されるため、必ずしも適正価格で取引されるとは限りません。
そういったときに、提示された価格の根拠を問いただす適正価格の指標となるもの、あるいは所有している不動産の価値を調べるときに利用されることの多い数値です。
基準地価:国土利用計画法をもとに都道府県知事が公表
基準地価は別称を「基準値標準価格」といい、その年の7月1日時点における全国の土地価格のことです。また、都道府県ごとに算出される特性上、「都道府県調査地価」とも呼ばれており毎年9月に発表されています。
基準地価は、公示価格とあわせて一般の方や企業、地方公共団体が土地を取引する際の重要な指標となっています。
公示価格との違いは、国土交通省ではなく都道府県が主体となって調査している点です。また、公示地価は都市計画法という法律を守る必要がある「都市計画区域」の中の不動産を対象に価値を算出します。
対して基準地価は、都市計画以外の区域も算出対象であるため、公示地価に比べて計算される対象区域が広いという特徴があります。その他、細かな違いはあるものの相違点はそれほどなく、主に公表から次回の公表まで1年間開く公示価格の補助として機能している評価額です。
公示価格と基準地価を確かめる方法
公示価格や基準地価は、国土交通省が提供している「標準値・基準値検索システム」を利用することで検索可能です。
調べる方法は至ってシンプル。サイトにアクセスし、表示されている日本地図上から調べたい都道府県、市町村を選択します。そして、以下の項目を選択することで検索できます。
入力項目 | 項目の役割・意味 |
---|---|
対象 | 調べたい地価情報(地価公示=公示価格、都道府県地価調査=基準地価) |
調査年 | 地価情報を調査した年度 |
用途区分 | 住宅地、商業地といった検索対象の絞り込み |
地価 | 調べたい地価の範囲(千円/㎡) |
評価額だけでなく最寄り駅や地積、形状や利用区分など、多様な情報が開示されています。
路線価:専門家の鑑定結果をもとに国税庁が公表
路線(道路など)に面している宅地の1㎡あたりの土地評価額が「路線価」です。専門家の鑑定結果をもとに国税庁が毎年7~8月に発表します。
路線価は贈与税や相続税、固定資産税を算出するときに利用され、納税額の基準として機能させるために調査地点が非常に多いことが特徴です。路線価を使って評価額を求める場合は、以下の計算式を使用します。
路線価を使って評価額を求める方法 |
---|
評価額=路線価×敷地面積(㎡) |
なお、路線価は2種類存在しており、目的に対応した名称である「相続税路線価」と「固定資産税路線価」に分かれています。それぞれ、おおむね公示価格の7~8割程度に設定されているため、公示価格の分からない場合は路線価から逆算するケースも多いです。
これらは名前の通り、贈与税や相続税の税金を算出する際に相続税路線価を用いて、固定資産税を算出する場合は固定資産税路線価を用います。
路線価を確かめる方法
路線価は「路線価図・評価倍率表」から調べることができます。掲載されている日本地図から、路線価を知りたい都道府県を選ぶだけの簡単操作で路線価を調べられます。
路線価は、全ての土地に定められているわけではありません。路線価が算出されているのは市街地の宅地周辺ばかりで、郊外の宅地や農地、山林などには設定されていないケースも多いです。
こういった路線価がない場所は「倍率地域」と記載されており、倍率方式を使って不動産を評価します。
倍率方式によって評価額を確かめる方法
倍率地域と記載されていた場合は倍率方式を利用しなければならず、以下の計算式のように固定資産税評価額に所定の評価倍率を乗じて評価額を計算します。
倍率方式の計算式 |
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相続税評価額=固定資産税評価額×評価倍率 |
たとえば、固定資産税評価額が1,500万円、評価倍率が1.2だった場合の評価額は「1,500万円×1.2=1,800万円」です。
固定資産税評価額を調べる方法には色々な方法がありますが、毎年送付される固定資産税の通知を見るのがもっとも簡単です。
また、評価倍率を調べる方法は、路線価と同じく路線価図・評価倍率表の検索結果から「この市区町村の評価倍率表を見る」という項目から閲覧できます。
固定資産税評価額:固定資産税の基準となる評価
固定資産税評価額とは、固定資産税のほか都市計画税や不動産取得税、登録免許税を計算する際に基準となる評価額のことです。各市町村が「固定資産評価基準」にもとづいて個別に定めています。
この評価額を利用すれば、固定資産税の計算は至って単純です。
固定資産税評価額を利用した固定資産税の計算方法 |
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固定資産税評価額×1.4% |
また、固定資産税評価額は、土地と建物によって評価額の目安や決まり方に、以下のような違いがあります。
固定資産税評価額の目安 | 評価額の決まり方 | |
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土地 | 土地の実勢価格の70% | 土地の場所や面積、形状などをもとに算出 |
建物 | 新築時の請負工事金額の50〜60% | 家の構造や規模、築年数によって算出 |
なお、固定資産税評価額は3年に1回公表されますが、急激な価格下落が発生した場合は3年間が経過していなくても変更されることがあります。
固定資産税評価額を確かめる方法
固定資産税評価額を調べるもっとも簡単な方法は、固定資産税の納税通知書を確認することです。固定資産税の課税明細の欄に、土地や建物の固定資産税評価額が確認できます。
しかし、納税通知書は、固定資産税を支払うと捨ててしまう方も多いため、手元にないケースも少なくありません。その場合は、不動産を管轄する市役所で「固定資産税評価証明書」を取得しましょう。
もしくは、各市町村に保管されている「固定資産台帳」を閲覧することでも確認できます。また、中古物件を購入するときは、不動産の仲介業者に尋ねるのも有効でしょう。
取引時における不動産の評価額は立地・土地の形状で変動する
不動産鑑定士に評価額を算出してもらう場合、特に不動産の立地・土地などの影響が顕著に結果へあらわれます。これは、不動産の立地や土地の形状は「住居としての利便性」や「土地の利用用途」に大きく関係するからです。
土地の形状が歪んでいたり奥行きが長かったりすれば、建物が建てづらいため利用価値としては低く見積もられます。また、間口が狭い土地や道路に面していない立地、さらには土壌汚染があるような衛生面に問題のある土地の需要は低下します。
こういった実用性の観点から、立地や土地の形状は取引時における評価額に大きく関係するのです。
不動産の評価額はどのような場面で利用するの?
ここまで解説したように、不動産の評価額といっても多種多様。各評価額を利用するにあたり、ケースバイケースで適切な方法を用いる必要があります。
この項では、不動産の評価額がどのタイミングで利用されるのか解説していきます。
不動産の資産価値を知る場合
実際に市場で不動産を売買するときは、実勢価格や公示価格などの評価額を用います。これは、冒頭部分でも解説したように「不動産の価値」に正解がなく、客観的な指標がないままでは妥当な金額を求められないからです。
そのため、土地を売買するときには、適正な価格で正常に売買取引が行われるように、実勢価格や公示価格などの評価額を指標にします。
固定資産税などの税金を計算するとき
固定資産税や都市計画税などの税金は、固定資産評価額が基準となります。
相続税や贈与税の対象となる財産を算出するとき
相続税や贈与税などの税金を算出するときには、路線価や固定資産税評価額を使用します。
通常、相続税や贈与税の対象となる不動産は、路線価を使って評価額を求めます。しかし、路線価を算出するためには規定を満たす程度に道路へ接している必要があるため、この方法では評価額を算出できない場合もあります。
そこで、路線価を使えないケースでは「倍率方式によって評価額を確かめる方法」でも解説したように、固定資産税評価額を利用して計算する倍率方式が利用されるのです。
不動産の売買価格は需給バランスに左右される
不動産の売買額は実勢価格や公示価格などを参考にしますが、実際は買主と売主の需給バランスによって左右されるものなので、各評価額はあくまで参考材料にしかなりません。
たとえば、Aさんが所有している不動産を、Bさんが4,000万円で買いたいと申し出たとします。これをAさんが承諾して取引が成立した場合、その不動産の実勢価格は4,000万円となります。
一方、Aさんが不動産を4,000万円で売りに出していても、誰も4,000万円で買ってくれないなら取引が成立しません。その場合、Aさんは不動産の価格を値下げして売ることになります。こうして、結果的にCさんが3,000万円で不動産を購入することもあるのです。
このように、買主の需要と売主の供給が一致したときのみ取引が成立するため、売買価格は「たまたま買主と売主がいた」という不確実な状況下で成り立っています。つまり、不動産の売買価格というのは非常に曖昧なのです。
金利と不動産の売買価格の関係
金利と不動産価格は、大きな相関関係があります。日本銀行が打ち出す金利政策によって、住宅ローンの金利が変動する仕組みだからです。
一般的に、金利が上昇すると住宅ローンの返済額が上昇することから、不動産の需要が低下し不動産価格は下落します。反対に金利が低下すると住宅ローンの返済額が低下するため、需要が高まって不動産価格は上昇します。
現在、日本は超低金利政策が続いているため、いまだ不動産価格は上昇を続けている状況です。こうして、評価額と需給バランスのほかに、金利でも売買価格は上下します。
まとめ
不動産の評価額は、売買取引の場面だけでなく納税や相続など、さまざまなシーンで利用します。ただし、利用目的ごとに適切な計算方法を選ばなければ、評価額は指標として正しく機能しません。
特に、投資目的で売買される不動産の価値が、評価額によって決まると認識するのは避けましょう。売買価格は需要と供給のバランスによって大きく左右されるため、公示価格の通りになっている不動産を探していては、不用意に勘ぐって割安な案件を逃す恐れもあります。
しかし、いくらか評価額を意識しなければ、明らかに割高な条件を提示されても気付けません。そのため、評価額は最低限理解しつつも評価額に縛られ過ぎず、あくまで一指標だと考えて取引に臨むべきでしょう。