インカムゲイン・キャピタルゲインの違いって?初心者向けにわかりやすく解説
By Oh!Ya編集部
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インカムゲインは「資産の保有により得られる利益」、キャピタルゲインは「資産の売却により得られる利益」といった意味を持ちます。
簡単な解説としてはこれで完結しますが、意味を覚えただけで何かが変わるわけではありません。
今回は、2つの利益を理解して、どのように活かせば良いのか解説していきます。
目次
「インカムゲイン」は資産から継続して生まれる利益
インカムゲインは、保有している資産から継続的に生まれる利益です。たとえば、銀行利息を1%としたとき、10万円を1年間預けることで10万1,000円に増加します。この例では、資産を保有しているだけで自動的に発生した1,000円が、インカムゲインです。
ただし、銀行預金の利息がバブル崩壊とともに低下したことと同様に、どのような運用方法でも生涯にわたりインカムゲインの利益率が保証されることはありません。そのため、インカムゲインを狙って投資をする場合でも、時流を見極めて資産運用をする姿勢が必要です。
具体的にどのような投資でインカムゲインを得られるの?
日本国民にとって、最も馴染み深いインカムゲインは銀行預金です。しかし、預金利息は1%を大きく下回るまで低下したため、実際には資産を運用してもインカムゲインの恩恵を感じられません。
こうした背景によって、インカムゲインを狙って資産運用を行う投資家たちは、株式投資や不動産投資を主な投資先に設定するケースが多いです。株式投資であれば配当金収入や株主優待、不動産投資であれば賃料収入がインカムゲインに該当します。
後述するキャピタルゲインに比べて、一度に得られる利益の上限は低い傾向にありますが、保有しているだけで収入が発生するため「手間がほとんど発生しない」という特徴があります。
「キャピタルゲイン」は資産の値上がりによる利益
キャピタルゲインは、保有している資産を売却することで獲得できる利益。10万円分の資産を購入して1年後に12万円で売却すれば、キャピタルゲインは2万円です。
一方、10万円で購入した資産を8万円で売却するといった場合は、キャピタルゲインではなくキャピタルロスといいます。インカムゲインと対になる言葉として、投資に関する話題では度々登場するため、必ず覚えておくべき用語です。
どんな投資ならキャピタルゲインを得やすいの?
投資目的で購入される金融商品は、ほぼ全てがキャピタルゲインを得られる投資対象です。インカムゲインの解説にも登場した株式投資や不動産投資はもちろん、投資信託や平成後期に話題となった仮想通貨もキャピタルゲインが期待できます。
ただし、インカムゲインのように保有するだけで利益を得られるものではないため、キャピタルゲインを継続的に獲得し続けようと考えるなら、比例して運用の手間がかかります。
目的によって重視すべき利益は異なる
インカムゲインとキャピタルゲインの違いを理解したうえで、つぎに考えるべきなのは「自身の目的に合った投資手法」です。もちろん、インカムゲインとキャピタルゲインの両方を狙うことは間違いではありません。
しかし、それぞれの利益獲得に適した投資先は異なり、知識も資本力も乏しい初心者が一度に両方を狙うのは難しく、まさに「二兎を追う者は一兎をも得ず」という状態に陥ってしまいます。
まずは、投資によってどのような未来を得たいのか、目標から逆算して投資スタイルを選んでいきましょう。
経済的独立をゴールとするならインカムゲイン
いわゆる「不労所得」や「経済的独立」の実現を投資のゴールとするなら、インカムゲインによる利益獲得をメインにした投資をおすすめします。インカムゲインはストック型の資産運用であり、キャピタルゲインのように単発で利益をあげるタイプではありません。
利益のスケールも小さく、コツコツと運用元本を積み上げる地味なスタイルなので、短期的に収入を伸ばせる手法ではないです。しかし、インカムゲインが持つ「定期的に決まった金額を得られる」という特性は、中長期的に積み上げたときに本領を発揮します。
理由1:積み上げ式のストック収入である
たとえば、配当利回り3%の株式投資を100万円分運用すれば、年間の不労所得は3万円です。これでは生活費の足しにはならず、経済的独立の一歩としてあまりに小さいように思えます。
次年度に100万円プラスして200万円を運用することで、年間の不労所得は6万円になりました。しかし、このペースで毎年100万円ずつ増やしたとしても、30年目の運用額は3,000万円なので年間の不労所得は90万円程度です。
多くの人は「30年間、ずっと100万円を投資してこれだけなのか」と気分を落としてしまいますが、ここには見落としがあります。こうした積み上げ式のストック収入は、「複利効果」を活用することで劇的に伸び率を高められるのです。
投資効率を劇的に高める「複利効果」とは?
先ほどの解説では1年目に100万円、2年目に200万円を株式投資に充てていました。つまり、1年目の投資で獲得した3万円を再投資せず、貯蓄や消費など投資以外の選択に充ててしまっているのです。
これを、複利運用の対になる運用方法として「単利運用」と呼びます。一方、先ほどの例でいえば、複利運用は1年目で獲得した3万円を再投資に充てて、2年目に203万円を投資することです。
一見すると運用額の増加率は小さく、地味に思えてしまう手法なのですが効果は絶大。金融庁が提供している「資産運用シミュレーション」を利用して、年額100万円(毎月8万3,333円)をインカムゲインの利回りを3%だと仮定し、複利運用を30年間続けたものが以下です。
出所:金融庁「資産運用シミュレーション」
上記画像の青い部分が「元本」、つまり投資資金として投じたお金です。一方の黄色い部分は「運用利益」であり、30年目には複利効果によって投資目的で動かせるトータル資産が4,856万円にまで増えています。
対して、利益を再投資以外に充ててしまう単利運用を選んでいれば、積立によって投資目的で動かせる運用元本は3,000万円のみ。両パターンを前提条件にして、配当利回り3%の株式投資を運用した場合はつぎような差が生まれます。
配当利回り3%の株式投資を運用した場合
運用方法 | 30年目に運用できる金額 | 年間配当収入 |
---|---|---|
複利運用 | 4,856万円 | 145万6,800円 |
単利運用 | 3,000万円 | 90万円 |
複利運用を続けてきた場合は、毎年の投資利益を再投資することで運用規模を大きくし、30年目の年間配当収入は145万円超を得られる計算です。
この程度の安定した不労所得があれば、失職してもいきなり生活に困窮することはないため、会社に依存していないレベルだといえます。30年間、給与を全て投資に充てているわけでもありませんから、手持ちのキャッシュとあわせれば保有資産はかなり多額になっているでしょう。
一方、単利運用を続けた場合は、同じ利回りの投資先を選んだとしても年間配当収入は90万円。決して少ない金額ではないものの、複利運用と比べて年間55万円の差があるので大きく見劣りします。
このように、インカムゲインを主軸とした資産運用では、複利効果を積極的に狙うことで最終的に大きなリターンを獲得できるのです。
理由2:利益額の予測が容易である
インカムゲインには、株式投資の配当金収入や不動産投資の賃料収入が該当すると解説しました。前者は「配当利回り」という項目でネットから確認できますし、後者は「家賃相場」という要素によって、ほぼ利益率が固定されています。
家賃が1年後に倍になったり、その翌年には半額になったりして、全く予想ができないということはありませんよね?
こうして利益額の予測が容易なことで、先ほどの資産運用シミュレーションのように「30年後にはこのくらいの資産額になりそうだ」といった投資計画を立てられます。プランを用意して堅実に資産運用をしたい人にとって、これほどのメリットはありません。
キャピタルゲインは来年や再来年の利益を予想できないので、これはインカムゲイン特有のメリットだといえるでしょう。
目先の利益を望むのであればキャピタルゲイン
長期スパンでの経済的独立といった目的ではなく、できる限り早く資金を手に入れて何か投資以外の用途に充てたいという「資金調達」のようなイメージを理想とするなら、キャピタルゲインを狙った投資が候補に挙がります。
たとえば、資本金を用意して起業をしたいけれど、本業の給与だけでは金銭を補えないといったケースなどです。こうした場合にインカムゲインではなくキャピタルゲインを狙う理由は、大きく2つあります。
理由1:投資先の見極めに成功すれば高利益を得られる
短期的に多額の利益を得られる可能性が高いということが、キャピタルゲインを狙うべき最大の理由です。投資の世界では、常にリスクとリターンは比例の関係にあります。
インカムゲインは安定して利益を獲得しやすい投資スタイルですが、短期間のうちに投資額の2倍や3倍の利益を得られることはありません。インカムゲインで期待できる年間利回りは、株式投資なら3~5%、不動産投資なら3~15%程度が現実的な範囲です。
対してキャピタルゲインは、短期間のうちに投資額と同程度の利益や、それ以上の利益を得ることも不可能ではないのです。ただし、大きなリターンを獲得できる可能性の裏側には、投資をして大きく損をする可能性があることも忘れてはなりません。
短期的に株価が10倍になる「テンバガー株」を狙ったり、割安な不動産を購入して短期売買を繰り返したりする手法はあるものの、どちらも予想の真逆を行く可能性があります。こういったリスクを許容できるなら、キャピタルゲインは優れた投資スタイルだといえます。
理由2:ビジネスセンスの強化に繋がる
インカムゲインを中心に利益を得る資産運用は、最初に優良な投資先か否かをじっくり調べさえすれば、非常に再現性が高く投資センスに依存しない手法です。対してキャピタルゲインは「短期的に利益を獲得する」という一種のルールを課すため、時間軸を意識せずにのんびりと投資をするわけにいきません。
投資先が来年、再来年にトレンドに乗って爆発的な利益を生むのか、ビジネスモデルと世間の流行に対する深い理解を必要とするのです。
たとえば、いまやフィットネスと聞けば誰もが思い浮かべる「RIZAPグループ」は、2017年初めに200円台だった株価を2017年後期に1,500円近くにまで伸ばしました。
これに乗じてキャピタルゲインを得た投資家は、健康志向の高まりを察知しただけではありません。「設備・場所を提供するビジネスモデル」という既存のジムの常識を覆した、個室・予約制という徹底して固定費を抑えた粗利の高いビジネスモデルの登場に注目していたのです。
このようにキャピタルゲインを追求すれば、必然的にビジネスモデルの理解に努める必要があるため、後々起業をしようと考えるならビジネスセンスの強化に繋がるというメリットがあります。
インカムゲインを追求するなら第一候補は「不動産投資」
先ほどの解説を見て「不労所得が欲しいけれど想像より稼げない」と感じる人は多いと思います。今回は計算のイメージがしやすい株式投資を例にしていますが、やはり実際には伸び率が緩やかで非効率。これはインカムゲインを追求するうえで宿命だといえます。
ただし、数多くある投資先のなかで、不動産投資に限っては高利益率な不労所得を実現しやすいです。なぜなら、現金だけを投じて運用する投資方法とは異なり、不動産投資では金融機関の融資を利用して多額の資本金を運用できるからです。
事実、不動産投資家のなかには、融資を利用して数億円を運用している人が大勢います。ローンを組んで5,000万円のアパートを二棟購入すれば、それだけで保有資産が1億円を超えることから、数億~十数億円の資産総額を保有するのは決して珍しくないのです。
不動産投資ならどのくらい利益を獲得しやすいの?
たとえば、利回り5%で5,000万円の物件を運用すれば年間250万円の収入となり、1年目から前述したシミュレーションを大きく上回る不労所得を得られます。
このうち、何割かローン返済に充てるため純粋な手残りはもっと減りますが、複利効果を活かしてキャッシュを貯めて不動産を買い進めることで、融資のスタートダッシュ効果と相まってスピーディーな経済的独立が可能です。
キャピタルゲインを追求するなら第一候補は「株式投資」
インカムゲインを追求するなら不動産投資が最適だと解説しましたが、キャピタルゲインを狙うなら株式投資をおすすめします。なぜなら、株式市場は流動性が高く、売りたいときに即時売却できるからです。
キャピタルゲインは「資産の売買における価格差」で利益を出すため、いくら資産の価値が高くなっていても、売却できなければ現金に変えられずキャピタルゲインを得られません。 ここに対して過度な制限がかかるのは、キャピタルゲインを狙う投資家にとって致命的なのです。
そういった意味で、不動産投資はキャピタルゲインを狙った投資に不向きだといえます。これは、不動産の売買は手続きが多いために時間と手間を要すること、所有期間が5年以下の不動産売却には高い税率を課せられることが主な理由です。
キャピタルゲインを狙うなら最終目的を設定すべき
キャピタルゲインを軍資金にして、何かに挑戦することをゴールとするなら、キャピタルゲインの獲得の先にある最終目的は明確に設定しておきましょう。
資産運用だけで生活していくならインカムゲインが適切であるにもかかわらず、あえてキャピタルゲインを選ぶということは、「何かを始めたい」や「何かが欲しい」といったモチベーションがあるはずです。
これが明確にならないまま、ただ何となくお金が欲しいからという理由で投資を始めるのは危険です。一部の才能ある投資家を除けば、投資人生を終始勝ち続けることは困難であるため、ゴールを決めないまま投資を継続すれば終わりのない消耗戦になってしまいます。
- 5年後までに投資で1,000万円を2,000万円に増やす
- VR技術に可能性を感じるので、トレンドが終わるまでVR企業に投資したい
万人に共通する正解はありませんが、特にビジョンもなく「お金を動かすこと」を目的としてしまわないよう、最終目的の設定を推奨します。
まとめ
インカムゲインとキャピタルゲインは、最も基礎の部分にあたる投資知識ではあるものの、奥が深いため時間を取ってじっくりと向き合うべき要素です。今回ご説明したように「何を目指すか」によって、インカムゲインとキャピタルゲインの比率は調節されるべきだからです。
平成を終えて令和に突入し、資産運用の必要性はさらに高まりつつあります。この機会に投資について考えを深めて、お金を上手く扱えるよう投資プランを立ててみてください。