リースバックで家を売っても住み続けられる本当の理由
By Oh!Ya編集部
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住宅ローンが返済困難になっても自宅を手放すことなく住み続けることができる仕組み、もしくは自宅を売却して老後資金を得ても自宅から引っ越さずにすむ仕組みとして、「リースバック」をご存知でしょうか。
普通の考えであれば、住宅ローンの返済困難やそうでなくても自宅を売却したら住み続けることはできず、引っ越しを余儀なくされるのが常識ですが、リースバックは引っ越しが不要でそれまでの生活を続けることができるというメリットを持っています。
それならぜひリースバックを検討したい、もっと詳しく知りたいという方は少なからずおられると思います。そんな方のためにリースバックの基本やメリット&デメリット、さらにどんな人に適した仕組みなのかについて詳しく解説します。
目次
引っ越さなくてもいい任意売却「リースバック」の基本
リースバックとはどういう仕組みなのか?なぜ住宅ローンが返済困難になっても自宅に住み続けられるのか?そんな疑問にお答えしつつ、リースバックの基本を解説します。
リースバックとは?
リースバックとは、不動産取引の一種である売却の一種に賃貸契約がセットになったものです。売却の中でも任意売却に近いもので、任意売却は住宅ローンが返済困難になった人が自宅を売却する際に利用する仕組みとして知られています。
住宅ローンの延滞を続けていると自宅が競売にかけられてしまい、そうなると落札した人のものとなり、そこに住み続けることはできなくなります。しかし、リースバックは正式名称を「賃貸借契約付売却」というように売却に賃貸借がセットになっているのが特徴なので、売却した後も賃貸の形で住み続けることができます。
なお、リースバックという名称の由来は「Sale and Leaseback」から来ています。売却と貸し戻しがセットになっているといった意味合いですが、最後のLeasebackという言葉だけがリースバックという名称に使われています。
任意売却とは?
リースバックを理解するには、任意売却についてもう少し補足しておく必要があると思います。任意売却は主に住宅ローンが返済困難になった人が利用する仕組みであると述べました。住宅ローンが返済困難になった人というのは、そのまま状況を放置していると自宅を裁判所の競売にかけられてしまいます。そうなると落札者に買い叩かれてしまう可能性が高くなります。
そうなる前に不動産業者が売却をして、少しでも高く売ってそれをローン残債の返済に充てようというのが、任意売却です。買主に足元を見られないようにすることで少しでも高く売るのがミソで、住宅ローンが返済困難になってしまったら任意売却が最も「まともな解決方法」だと思います。
住宅ローンの返済困難になったら取りうる選択肢3つ+NGな選択肢3つ
リースバックを検討する方には、大きく分けて2つの状況があります。1つは住宅ローンの返済困難で、もう1つは老後資金の確保です。ここでは住宅ローンの返済困難が生じた時に取りうる選択肢として、有効なもの3つと、選択してはいけない3つをご紹介します。
①任意売却
前項で解説した方法で、売却するしかないという状況になったら、最もまともな解決法です。
②返済期間の延長
金融機関に相談をして返済期間を延長することができます。最長で15年の延長が可能で、これに成功すれば毎月の返済額が少なくなるため、それによって解決できる可能性があります。
③自己破産
もはやこれまで、他の借金も多くなって首が回らないという状況になったら、自己破産という最終手段があります。自己破産をしたからといって犯罪になるわけではありませんし、自宅を手放すことにはなりますが、再出発をしやすい選択肢です。
次に、こちらの3つは選択してはいけない方法です。なぜ選択してはいけないのかは、それぞれ個別に解説します。
①新たに借金をしてしのぐ
目の前にある借金問題の解決に、別の借金を充てるというのは、実は最もリスクが高いことを知っておいてください。問題を先送りしているだけでむしろ借金は増えますし、借金を借金で返すという生活は他のことに頭が回らなくなってしまい、生活の質にまで影響を及ぼします。
②無理をして返済し続ける
他の生活費などを切り詰めて無理に返済を続けるのも、問題の先送りに他なりません。仮にローン返済が10年残っているとして、そんな生活を10年間も続けられるでしょうか?それを考えると自ずと答えは出ると思います。
③放置する
もはや思考停止してしまい、何もしないというのも問題を深刻化させるだけです。住宅ローンの延滞を続けているとやがてローン会社から競売にかけられてしまい、自宅は落札した人のものになります。
住宅ローン返済困難になる人が増えている
ここでひとつ、住宅ローンの返済困難に関するデータをご覧いただきましょう。これは日弁連(日本弁護士連合会)がまとめた「個人再生事件記録調査」という調査結果で、個人再生という債務整理を行った人がどれだけいて、その理由がなんだったのかといった情報がまとめられています。
この調査結果の16ページ目に記載されているのは、個人再生を余儀なくされた人の負債原因です。何の借金でそんな事態になってしまったのかというわけですが、その中で「住宅購入」が16%を占めていることが分かります。もちろん生活苦や低所得、事業資金、保証といったありがちな理由が上位を占めていますが、本来は夢のマイホーム購入だったはずの「住宅購入」が個人再生という結果につながっている人が少なからずいることが分かります。
このデータから分かるのは、住宅ローンの返済困難という事態は決して珍しいものではなく、社会の一部として常に起きていることだという事実です。
リースバックとリバースモーゲージの違い
自宅を活用して住宅ローンの返済困難状態を解決、もしくは老後資金などを確保する方法としてリースバックにスポットを当てていますが、よく似た目的に利用できる仕組みとしてリバースモーゲージという方法論もあります。この両者は似ている部分もありますが、根本的に異なる部分もあります。ここでは、その違いを明確にしておきたいと思います。
最大の違いは、リースバックは不動産の売却+賃貸であるのに対し、リバースモーゲージは借金であることです。自宅を担保にお金を借りるため低金利でまとまったお金を手にすることができますが、借金なので一定のルールに従う必要があります。具体的には「投資、事業資金目的は不可」であることや年齢制限があること(65歳以上)、物件によってはマンション不可となるなど、リースバックと比べるとデメリットが多いように感じます。
さらにリバースモーゲージは売却することなく自宅を所有したままなので、固定資産税の納税義務は所有者に発生します。契約が終了したらどのみち売却となるのがリバースモーゲージなので、それなら最初の段階で売却してしまったほうが資金の使途に制限がありませんし、納税義務もないのでトータルでメリットが大きいと思います。
リースバックは究極の解決策か?
リバースモーゲージよりもメリットが大きく、自宅を活用してまとまったお金が得られるリースバックは、それでは住宅ローンの返済困難や老後資金を確保する究極的な解決策なのでしょうか。
自宅を手放すことになるので100%の解決と呼べるかどうかは微妙なところですが、お金の問題で切羽詰まっている人にとって「渡りに船」であることは確かです。どんな人にリースバックが最適なのかは、後述します。
リースバック後の家賃はいくらくらい?
ところで、リースバックを適用して自宅を任意売却して賃貸に切り替えた場合、家賃はどれくらいになるのかも気になるところだと思います。これについては相場が決まっていて、売却価格の8~15%となっています。これは年額なので、毎月の家賃はそれを12で割った月割り額となります。
リースバックのメリット7つ
条件に当てはまる人にとってはとてもメリットが多いリースバック。ここでは、そのメリットを7項目で解説します。
住宅ローンの返済問題を解決できる可能性
現実問題として、リースバックを検討する人の大半は「お金に困っている人」です。特に多いのが住宅ローンの返済困難問題なので、リースバックによって自宅を売却、それで得られたお金を返済に充ててローンを完済すれば、住宅ローンの返済困難問題は根本的に解決します。
これも後述しますが、リースバックは前提として自宅の売却代金がローンの残債を上回っていないと成立しません。つまり、自宅を売却してローンが残るような場合は利用できないことが多いので、リースバックが成立するということはローンがなくなることを意味します。
自宅の所有権は移転しますが、家賃さえきちんと支払っていれば引き続き同じ家に住み続けることができるので、窮余の一策としては十分価値があります。
売却しても引っ越し不要
リースバックという言葉には、再び貸すといった意味があります。これもリースバックの大きな特徴で、自宅を売却してもそこに住み続けられるため、引っ越しは不要です。表面上はそこに住み続けているため、住宅ローンなどお金の問題が起きたことをいちいち自分から言わなければ、おそらく周囲からは分からないでしょう。
高齢になると住み慣れた家から離れたくないという気持ちになる人も多いので、その思いに応えるという意味でも引っ越しが不要なのは大きなメリットです。
将来的に買い戻しができる可能性が残る
リースバックでは契約の内容によっては将来の買戻しを可能にすることができます。今はお金の問題によって自宅を手放したものの、やはり住み慣れた家であり、かつてはそこの持ち主だったのですから、お金の問題が解決したら再び所有したいと思う人は多いと思います。リースバックでは契約内容によってそれを可能にできるので、人によってはメリットになる部分です。
売却活動の事実を知られる心配がない
自宅を売却する場合、通常は仲介といって不動産業者に買主を探してもらう必要があります。その場合は近隣へのチラシにも売却情報が載るため、近所で知られないようにするのはほぼ不可能です。
しかし、リースバックの場合は買取という扱いになるため買主が最初から決まっており、売却活動をする必要がありません。そのためチラシに売却情報が載ることもなく、売却の事実を知られる心配がありません。これはリースバックだけでなく、不動産買取のメリットとして広く知られています。
不動産をいかして老後資金を確保できる
定年退職をした後で老後資金が足りなくなったとしても、新たに仕事を見つけて稼ぐといっても限度があるでしょうし、そもそもそんな体力があるかどうかも怪しいところです。
リースバックを利用すれば自宅の売却代金で老後資金を確保することができるため、「どうせ子供に家を残す気はない」というのであれば、いっそのこと売却して老後資金を確保し、リースバックによって家賃を払いながら余生を過ごすのも一考の価値があると思います。
事業性資金など使途は自由
リバースモーゲージは借金なので、借り入れたお金の使い道がある程度決まっています。しかしリースバックは売却なのでそれで得たお金を何に使うかは本人の自由です。
リバースモーゲージでは事業や投資などにお金を使えないため、そういった用途に使いたいとお考えの方には使途自由であることがメリットとなります。
自宅を現金化できるので遺産相続しやすくなる
子供が1人ではなく2人以上いる場合、自宅を相続するとなると分割するのが容易ではありません。それならいっそのこと売却して現金化すれば、簡単に遺産の分割ができます。
通常の不動産売却であれば引っ越しの必要が伴いますが、リースバックであれば同じ家に住みながら自宅の現金化が可能なので、引っ越しをすることなく自宅の現金化をしたい場合にはリースバックが最適です。
リースバックのデメリット
メリットの一方で、リースバックのデメリットについてもしっかり押さえておきたいと思います。あまり多くはないのですが、リースバックには以下のようなデメリットがあります。
かつての持ち家が借家となり家賃支払いが必要になる
リースバックでは自宅を売却し、そこに賃貸で入居することになります。かつてその家の持ち主だった人にとって、自宅が人手に渡って家賃を支払って「住まわせてもらう」ということに心理的な抵抗を感じることはあると思います。
ただしこれも考え方ひとつで、自分の名義で所有していたら固定資産税など税金が必要になります。リースバックをすると賃貸物件になるため、こうした税金の負担はありません。家賃負担が発生する一方で税負担がなくなるということも、認識しておく必要があるでしょう。
通常の任意売却より価格が低くなることがある
お金に困っているという理由で自宅を売却すると、どうしても足元を見られやすくなります。そのために任意売却があるわけですが、リースバックはそんな人に賃貸契約がプラスされていることや、将来の買戻しに可能性を残すなど借主に有利な特約が含まれているので、その分売却価格は低くなることがあります。
不動産取引では権利も「商品」なので、借主に有利な権利があると、その分売却価格が安くなるのは仕方ないことです。
将来の買戻しは実質上あまり意味がない
リースバックでは将来同じ物件を買い戻せる可能性がある、というのがメリットとしてよく挙げられていますが、これって実際のところはどうなのかと思いませんか?
お金に困って自宅を手放した人にとって、その状況が数年後に劇的に変わるとは考えにくいですし、仮にお金が入ったとしても新しい家に住みたいと思う人も多いはずです。リースバックの買戻しは理論的には可能なのですが、あまりに現実味はないと考えた方が良いと思います。
もうひとつ、リースバックで同じ家を買い戻そうとすると、価格が割高になります。割高になってまで古い家を買い戻すのであれば、なおさら新しい別の家を買おうと思う人が多くなるのは当然でしょう。
リースバックを選択するべき人は、こんな人
それではここで、リースバックを選択するべき人はどんな人なのか、できるだけ具体的に4つの項目に整理しました。
住宅ローンの返済困難問題から逃れたい
リースバックを検討している人の多くは、「お金に困っている人」だと述べました。その中でもとりわけ、自宅を売却してお金を工面したいと考えている人の多くは、その家の住宅ローンでお悩みであるという現実があります。
そこで、リースバックを最も検討するべき人として、住宅ローンの返済困難問題が起きていて、その問題からできるだけ早く逃れたいとお考えを挙げたいと思います。
しかも周囲に知られず穏便に解決したい
しかし、住宅ローンの返済困難問題というのはあまり周囲には知られたくない問題です。住宅ローンという借金自体は問題ありませんが、それが返せなくなっているというのはあまりカッコの良いものではなく、近隣だけでなく身内にも知られたくないという人が大半です。
任意売却であれば不動産の買い取りなので売却活動をする必要がなく、周囲に知られる可能性はぐっと低くなるのですが、そのまま売却してしまうと住み慣れた家には住めなくなってしまいます。そこで住み慣れた家に住み続けながらローン問題を解決できる方法としてリースバックが俎上に上がります。
引っ越しを伴わないという点でも、ローン問題を周囲に知られるリスクはさらに低くなります。
子供に自宅を残すつもりはなく、老後資金を確保したい
すでにリタリアをしている人にとって、新たな収入源を見つけることはそう容易ではありません。年金と貯金だけでは足りないとなった時に目をつけるのが自宅という資産です。子供にその家を残すつもりがない、もしくは子供が2人以上いて分割するのが難しいという場合に、リースバックによる現金化が有効になります。
そのまま同じ家に住み続けながら老後資金を確保し、なおかつ子供に現金を残せる可能性があるため、これらの条件に該当する人にとってはリースバックが唯一に近い選択肢となるでしょう。
お金の問題を解決しつつ今の家に住み続けたい
住宅ローンの返済だけに限らず、お金の問題というのは尽きないものです。特に高齢になると自分だけでなく兄弟や子供など身内にお金の問題が起きることも十分考えられます。
そんな時にまとまったお金を手に入れるとなると自宅を売却する方法を思い浮かべがちですが、そもそも自分の問題でもないのに自分の家を売却して引っ越すのは割に合わないと考える人も出てくるでしょう。
リースバックであっても自宅を手放すことに変わりはありませんが、引っ越しを伴わない分だけ生活への影響は抑えられます。さらにお金の問題が自分の問題ではなく一時的なものである場合、将来お金が返ってきて自宅を買い戻すことができる可能性も残ります。
リースバックの注意点や知っておきたいポイント
最後に、リースバックを実際に選択した場合に注意したいポイントを4つご紹介します。リースバックのメリットをしっかりと享受するために重要なものばかりなので、リースバックの決断はこれをお読みになってからにしてください。
オーバーローンだとそもそも利用できない
すでに少し触れましたが、リースバックは自宅を売却した代金でローンの残債を完済できることが前提になります。そうでないと自宅を手放した上にローンだけが残り、その上に家賃の支払いが発生するため、遠からずパンクするのが目に見えています。
リースバックをしようとする場合はまず、自宅を売却した場合の売却代金がローンの残債を上回っているかを精査する必要があります。もちろんリースバックを手がけている不動産業者はこの点を熟知しているので、事前に査定をした上でリースバックが可能かどうかを判断してくれます。
不動産の属性によっては買い手がつかないことがある
リースバックで実際に自宅を購入するのは、不動産投資家です。不動産業者は自宅を売却したい人と購入したい人の間を取り持っているだけなので、その投資家が投資価値のある家であると判断しない限りは、買い手がつきません。買い手がつかなければリースバックをそもそも実行できないので、最終的には不動産業者に買い取ってもらうことになります。
投資家が買いたがらないような物件を買い取ってもらうのですから、不動産業者による買い取りだとかなり安くなってしまいます。それではお金の問題を解決できないかも知れないので、「リースバックを決断したらすべて解決」ではない点に注意してください。
将来の買戻しにひと知恵
一度は手放した自宅を、やはり買い戻せるようになったら再び自分のものにしたいというのは、多くの人に共通する人情だと思います。リースバックではそのために買い戻しの特約を一筆入れることができますが、その時に「誰が買い戻すか」というひと知恵を加えておくと、将来の買い戻しがスムーズになります。
例えば、将来の買い戻しは本人ではなく子供がするというパターンがあります。これをすることによって事実上の相続となるため、住み慣れた家を子供が引き継いでくれるという形を作ることもできます。必ずしも前所有者本人が買い戻す必要はないので、「将来」がいつになるのかも含めてひと知恵加えたリースバック戦略を立てることをおすすめします。
リースバックで家賃を滞納したらどうなる?
ところで、ここまで触れてきませんでしたが、リースバックによって賃貸に切り替わった自宅で、家賃を滞納したらどうなるのでしょうか。
この場合は、即退去となります。もともとは自分の所有物だったといっても、今は違います。人手に渡った家を借りて住んでいるだけなので、家賃の支払いが滞ってしまったら退去となり、その際には容赦がないのでくれぐれも注意してください。
特に住宅ローンの返済困難問題でリースバックを利用した場合、お金に困っていた状態を解決するために自宅を売ってまとまったお金を手にした経緯があります。収入が少なくなったり途絶えたといった根本的な問題が解決しないと、近い将来に家賃の支払いに困ることも十分あり得ます。
そんなことにならないように、リースバックを一時しのぎの手段として利用するのではなく、それを機にお金の問題を根本的に解決できるように努めましょう。
まとめ
自宅を売却してもそのまま済み続けることができるリースバックには、住宅ローンの返済困難問題や老後資金の問題などを解決できる可能性があります。しかしメリットだけでなくデメリットや注意点もしっかり把握しておかないと「こんなはずではなかった」ということにもなりかねないので、リースバックをご検討の方は、この記事を最後までしっかりとお読みの上、判断をするようにしてください。